説明

線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤化合物および

式IおよびIIのアミノ末端ブロック化ペプチドボロナート化合物は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)および他のプロテアーゼを阻害するのに、ならびにFAPにより媒介される障害を治療するのに有用である。哺乳動物細胞におけるこのような障害または関連する病理学的症状のインビトロ、インサイチュおよびインビボでの診断、予防または治療のための、アミノ末端ブロック化ペプチドボロナート化合物、ならびにその立体異性体、互変異性体、溶媒和物および薬学上許容され得る塩の使用方法が開示される。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
37 CFR§1.53(b)の下で出願されたこの本出願は、35 USC§119(e)の下、2005年5月19日に出願された米国仮特許出願第60/682970号、および2005年10月25日に出願された米国仮特許出願第60/730292号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/682970号、および米国仮特許出願第60/730292号はいずれも、その全体が参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を含むプロリルペプチダーゼの阻害剤であるN−ブロックペプチドプロリンボロナート化合物、ならびにこれらの化合物を含む組成物および使用方法に関する。N−ブロックペプチドプロリンボロナート化合物は、FAPを阻害するのに、およびFAPによって媒介される障害を治療するのに、有用である。本発明はまた、哺乳動物細胞のインビトロ、インサイチュおよびインビボ診断または治療、あるいは付随する病理学的症状のためのN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
癌遺伝子および腫瘍細胞内に発生する腫瘍抑制遺伝子の遺伝的変異により引き起こされる初期の腫瘍化の後、癌の病状悪化につながる重要な段階のそれぞれについての固有の性質として腫瘍−宿主相互作用が残る。固形腫瘍の増殖および転移は、結合組織のフレームワークである支持腫瘍間質の補充を必要とする。腫瘍の間質性区画は、血管内皮細胞、線維芽細胞および炎症細胞を含む種々の宿主細胞を含む。これらの宿主由来細胞が腫瘍組織に浸潤し、腫瘍細胞と相互作用し、引き続いて腫瘍細胞により集められて、腫瘍血管新生、増殖および転移を刺激する可溶性および不溶性因子の配列を産生することが次第に認識されつつある。これらの因子は、腫瘍細胞間のクロストークを媒介し、かつ宿主間質細胞を「ハイジャック」する線維芽細胞活性化タンパク質(FAP、セプラーゼとしても知られている)と同様に、インテグリンおよび細胞接着分子、細胞外基質メタロプロテイナーゼ誘導物質を含む(Yan et al(2004)Preclinica 2(6):422−426)。ほとんどの上皮癌における高度に一貫した形質の腫瘍間質性線維芽細胞は、セリンプロテアーゼファミリーのメンバーであるFAPの誘発物である。腫瘍関連間質細胞は、上皮性腫瘍形成を促進し得るが、このことは、間質性タンパク質が、新規な治療ターゲットを示し得ることを示唆する(Bhowmick et al(2005)Current Opinion in Genetics and Development 15:97−101;Joyce,J.A.(2005)Cancer Cell 7:513−520)。
【0004】
FAPは、胚発生において、組織再構築の部位で発現する細胞表面セリンプロテアーゼである。FAPは、創傷治癒または腫瘍間質における活性化メラニン形成細胞および線維芽細胞以外の成熟体細胞性組織では発現しない。FAP発現は、悪性転化の間に、増殖するメラニン細胞の細胞中では特異的に起こらない(Ramirez−Montagut et al(2004)Oncogene 23(32):5435−5446)。FAPは、プロリルペプチダーゼファミリーに属するが、これは、プロリン残基後にペプチド基質を切断するセリンプロテアーゼを含む(Rosenblum et al(2003)Current Opinion in Chemical Biology 7(4):496−504;Sedo et al(2001)Biochimica et biophysica acta 1550(2):107−116;Busek et al(2004)Intl.Jour.of Biochem.& Cell Biol.36:408−421)。プロリルペプチダーゼファミリーにはまた、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV;用語CD26ともいう)、DPP7(DPP II;静止細胞プロリンジペプチダーゼ)、DPP8、DPP9およびプロリルカルボキシペプチダーゼ(PCP;アンジオテンシン分解酵素C)も含まれる。より遠いメンバーには、プロリルオリゴペプチダーゼ(POPまたはプロリルエンドペプチダーゼ(PEP);プロリン酵素切断後;Ito,K.et al(2004)Editor(s):Barrett,Rawlings,Woessner,Handbook of Proteolytic Enzymes(2nd Edition)2:1897−1900,Elsevier,London,UK;Polgar,L.(2002)Cellular and Molecular Life Sciences 59,349−362)およびアシルアミノアシルペプチダーゼ(AAP;アシルペプチドヒドロラーゼ(APH))。プロリンペプチダーゼおよび関連タンパク質は、膜結合型および可溶性のメンバーのいずれも含み、広範囲の発現パターン、組織分布および区画化にわたっている。これらのタンパク質は、ペプチドホルモンによるシグナル伝達の制御に重要な役割を有し、糖尿病、腫瘍学および他の症候の標的を明らかにする。
【0005】
FAP(セプラーゼ)は、ウシ血清から単離され、精製して均一にされ、配列決定された(Collins et al(2004)Intl.Jour.of Biochem.& Cell Biol.36(11):2320−2333)。合成ペプチド基質の切断におけるウシFAPのプロテアーゼ活性は:(i)FAP中の複数のサブサイトが、酵素−基質結合に関与し、テトラペプチドの存在下で最小のペプチドを切断する;(ii)プロリン−X結合に対する高い一次基質特異性が存在する;および(iii)切断しやすい結合のC末端における疎水性残基への優先性がある、ことを示唆する。
【0006】
このことは、FAPが、ゼラチンおよびI型コラーゲンを分解し得るDPPおよびコラーゲン分解性活性の両方を有することにより実証された。良性および悪性皮膚黒色腫におけるFAPの発現および酵素活性が確立されており、腫瘍細胞増殖およびメラノーマ発癌の間の増殖の制御(Huber et al(2003)Jour.of Investigative Dermatology 120(2):182−188)、直腸結腸癌(Satoshi et al(2003)Cancer letters 199(1):91−98)および乳癌(Goodman et al(2003)Clinical & Exp.Metastasis 20(5):459−470)、ならびに乳房、結腸および肺癌(Park et al(1999)J.Biol.Chem.274:36505−36512)についてのFAPの可能性のある役割を示す。さらに、FAPは、肝硬変(Levi,MT et al(1999)Hepatology 29:1768−1778)、線維腫症(Skubitz,KM et al J.Clin.Lab.Med.(2004)143(2):89−98)および関節リウマチにおいて上方制御されるようである。
【0007】
線維芽細胞活性化タンパク質α(FAPα)は、培養ヒト線維芽細胞、肉腫および神経外胚葉性腫瘍細胞で発現した細胞表面抗原の血清学的調査の過程で産生したモノクローナル抗体mAb Fl9を用いて発見された。この抗体は、95kDaのFAPα糖タンパク質を有する原形質膜を特徴付けて、FAPをコードするcDNAを単離し、かつ、種々の正常なおよび新生物のヒト組織のFAPα発現を検討するのに用いられた(Park,John E.;Rettig,Wolfgang J.,Editor(s): Barrett,Alan J.;Rawlings,Neil D.;Woessner,J.Fred,Handbook of Proteolytic Enzymes(2nd Edition)(2004)2:1913−1917,Publisher:Elsevier,London,UK)。
【0008】
血球新生による血液細胞の成熟は、サイトカインおよびそのセリンプロテアーゼCD26/DPPIV(DPP−IV)による制御、ならびにFAP(McIntyre et al(2004)Drugs of the Future 29(9):882−886;Ajami et al(2003)Biochemistry 42(3):694−701)による制御を含む。ヒト線維芽細胞活性化タンパク質(FAPα)は、モノクローナル抗体(mAb)F19を用いて最初に同定されたM95,000の細胞表面分子である(Rettig et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85,3110−3114;Rettig et al.(1993)Cancer Res.53,3327−3335;Rettig et al(1994)Intl.Jour.of Cancer 58(3):385−392)。ヒトの2番染色体に局在化するFAP遺伝子(Mathew et al(1995)Genomics 25(1):335−337)は、マウス、ハムスターおよびアフリカツメガエルを含む種々の種にわたって保存された2277bpのオープンリーディングフレームを有する2812nt配列である(Scanlan et al(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:5657−5661;Park et al(1999)J.Biol.Chem.274:36505−36512;Niedermeyer et al(1998)Eur.J.Biochem.254:650−654)。対応するFAPタンパク質産物は、759または760のアミノ酸を含み、約88kDaの概算分子量を有する。一次アミノ酸配列は、II型内在性膜タンパク質に相同性であり、これらは、大きくかつ細胞外領域(ECD)に対応するカルボキシ末端、疎水性膜貫通領域および短い細胞質側末端により特徴づけられる。FAPは、多様な種においてジペプチジルペプチダーゼIV(DDPIV)に高度に相同性であり、DPPIVに対して61%のヌクレオチド配列同一性および48%のアミノ酸配列同一性を有する。FAPおよびDDPIVは、両方ともペプチダーゼ(プロテアーゼ)活性を有するが、生化学的および血清学的考慮は、これらのタンパク質が、それらの合成基質との酵素活性、ならびにそれらのTリンパ球(DDPIV誘導体)または反応性間質性線維芽細胞(FAP誘導体)の機能活性化(Mathew et al(1995)Genomics w5:335−337)が有意に異なることを示す。FAPα cDNAは、広い細胞外領域、膜貫通領域および短い細胞質側末端を有するII型内在性膜タンパク質をコードする(Scanlan et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,5657−5661;米国特許第6846910号明細書;国際公開第97/34927号パンフレット;米国特許第5767242号明細書;米国特許第5587299号明細書;米国特許第5965373号明細書)。FAPαは、DPP IV(DPPIV;EC 3.4.14.5)としても知られ、DPP活性を有する膜結合型タンパク質であるT細胞活性化抗原CD26に対して、48%のアミノ酸配列同一性を有する。FAPαは、酵素活性を有し、かつ、酵素機能に重要なセリン624を有する、セリンプロテアーゼファミリーのメンバーである(国際公開パンフレット第97/34927号;米国特許第5965373号)。セプラーゼ(FAPα)は、ホモ二量体の170kDaの一体化膜ゼラチナーゼであり、その発現は、ヒトメラノーマ細胞株LOXの浸潤度と相関し(Pineiro−Sanchez et al(1997)Jour.of Biol.Chem.272(12):7595−7601)、かつ、ヒト乳癌のマウスモデルにおける急速な腫瘍増殖を促進する(Huang et al(2004)Cancer Res.64:2712−2716)。cDNAの分子クローニングは、6アミノ酸の細胞質側末端を有するII型内在性膜タンパク質、続いて20アミノ酸の膜貫通領域および734アミノ酸の細胞外領域を予測する推定アミノ酸配列を有するセプラーゼの97kDaサブユニットをコードする。カルボキシル末端は、非古典的セリンプロテアーゼであるジペプチジルペプチダーゼIV(DPPIV)の推定触媒領域に相同性の(68%同一の)推定触媒領域(約200アミノ酸)を含む。保存セリンプロテアーゼモチーフG−X−S−X−Gは、G−W−S−Y−Gとして存在する。しかしながら、LOXおよび他の株化細胞由来のセプラーゼcDNAの配列解析により、セプラーゼおよびヒト線維芽細胞活性化タンパク質α(FAPα)は同じ遺伝子の産物であり、かつ、それらが実質的に同一であることを強く示唆する(Goldstein et al(1997)Biochimica et Biophysica Acta 1361(1):11−19)。
【0009】
FAPαは、多くの組織学的型のヒト上皮癌、治癒創傷の肉芽組織ならびに特定の骨および軟部組織肉腫の悪性細胞における反応性間質性線維芽細胞で、選択的に発現する。正常な成体組織は、一般に、検出可能なFAPαを持っていない(Chen et al(2003)Adv.Exp.Med.Biol.524:197−203)が、いくつかの胎性間葉組織は、分子を一過性に発現する。対照的に、共通の型の上皮癌のほとんど(乳癌、非小細胞肺癌および結腸直腸癌の90%を超える)は、FAPα反応性の間質性線維芽細胞を含む。これらのFAPα線維芽細胞は、新しく形成された腫瘍血管を伴い、腫瘍毛細血管内皮と悪性上皮細胞クラスターの基底側面との間に挿入された別の細胞内コンパートメントを形成する(Welt et al.(1994)J.Clin.Oncol.12(6),1193−1203)。FAPα間質性線維芽細胞は、原発性および転移性癌で見出されるが、試験された良性および前悪性上皮性病変(乳房および結腸直腸腺腫の線維腺腫)など、まれにしかFAPα間質細胞を含まない。正常組織におけるFAPαの制限された分布パターンおよび多くの悪性腫瘍の支持間質におけるその均一な発現に基づき、131I標識mAbFl9を用いた臨床治験が、転移性結腸腫瘍を有する患者で開始された(Tanswell et al(2001)British Jour.of Clin.Pharm.51(2):177−180)。マウスFAPによる腫瘍増殖の促進、およびFAPの抗体阻害剤による腫瘍増殖の阻害の証拠が、Cheng et al(2002)62:4767−4772により実証された。ヒトFAPは、ヒト皮膚/重症複合免疫不全マウス乳癌異種移植モデルにおける131I−標識ヒト化抗−FAPmAbで発現および標的化された(Tahtis et al(2003)Molecular Cancer Therapeutics 2(8):729−737)。
【0010】
FAPαの細胞外領域の高分解能X線結晶構造は、それらの活性部位におけるDPP−IVとの差異を明らかにした。FAPα、A657Dのジペプチド基質を用いた活性部位変異体の動力学的解析により、遊離のアミノ末端基質についての切断速度が増加したが、対応するN−ベンゾイルオキシカルボニル基質が野生型FAPαに対して減少したことが示された(Aertgeerts et al(2005)J.Biol.Chem.,Apr;10.1074/jbc.C500092200)。
【0011】
一般的な腫瘍間質マーカーとしてFAPに特異性を有する4つの完全ヒト抗体誘導体(単鎖抗体フラグメント、scFvs)を、指向された選択により単離する。重鎖可変領域ライブラリを含む非常に多様なIgG、IgMおよびIgDアイソタイプを、多数のドナーの多様なリンパ器官由来のcDNAを用いて産生した(Schmidt et al(2001)European Jour.of Biochemistry 268(6):1730−1738)。フレームワーク修飾を有する他の組換え型FAP結合タンパク質が発現された(米国特許第6455677号)。抗体を用いてFAP活性を完全にブロックする試みは成功しなかったが(Cheng,et al(2004)Abrogation of Fibroblast Activation Protein Enzymatic Activity Attenuates Tumor Growth.In.American Association for Cancer Research,95th Annual Meeting,Orlando,FL)、FAPに対して指向されたヒト化モノクローナル抗体であるシブロツヅマブ(Sibrotuzumab)は、癌治療のためにヒトで臨床治験がなされている(Kloft et al(2004)Investigational New Drugs 22(1):39−52;Scott et al(2003)Clinical Cancer Research 9(5):1639−1647;Cheng et al(2003)Clinical Cancer Research 9(5):1590−1595;Hofheinz et al(2003 Feb)Onkologie 26(1):44−8)。
【0012】
ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)阻害剤であるアミノボロン酸ジペプチド(タラボスタット(talabostat)、PT−100、Val−boro−Pro;Point Therapeutics)は、造血性組織で、高親和性相互作用により、特定のサイトカインの遺伝子発現を上方制御することが示されたが、これは、線維芽細胞活性化タンパク質に関与するように思われる(米国特許出願公開第2003/0158114号;同第2004/0152192号;Adams et al(2004)Cancer Research 64(15):5471−5480;Jones et al(2003)Blood 102(5):1641−1648)。FAPはまた、リンパ組織および腫瘍の間質でも発現されるので、PT−100はインビトロで腫瘍細胞に対する直接的な細胞毒性効果を有しないが、PT−100の腫瘍増殖への影響がマウスにおいてインビボで検討された。PT−100のマウスへの経口投与は、線維肉腫、リンパ腫、メラノーマおよびマスト細胞腫株化細胞に由来する同系腫瘍の増殖を緩徐にした。マウスのPT−100での処置は、周囲の腫瘍間質性線維芽細胞におけるマウスのFAP発現により特徴づけられる腫瘍モデルにおいて腫瘍増殖の減弱を結果として生じた(Cheng et al(2005)Mol.Cancer Ther.4(3):351−60)。しかしながら、PT−100は、DPP−8およびDPP−9もまた抑制するので、FAP特異的ではない。さらに、PT−100は、N末端アミンおよびボロナート基の分子内環化による自己不活性化のメカニズムを実証する。非ホジキンリンパ腫および慢性リンパ性白血病などの悪性血液疾患を有する患者における、タラボスタット(talabostat)RITUXAN(登録商標)(Genentech,Inc.)との組み合わせの安全性および有効性を試験するため、フェーズI/IIのヒト臨床研究が開始された。他の阻害剤標的プロリルペプチダーゼには、以下が挙げられる:Val−BoroPro compounds(Flentke et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1556−1559;Coutts et al(1996)J.Med.Chem.39:2087−2094;Shreder et al.(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4256−4260);N−アシル−Gly−BoroPro化合物(Edosada et al(2006)Jour.Biological Chem.281(11):7437−7444);N−アルキル−Gly−BoroPro化合物(Hu,et al(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4239−4242);1−(2’アミノアシル)−2−シアノピロリジン化合物(国際公開パンフレット第2001/040180号);およびボロノルロイシン化合物(Shreder et al(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4256−4260)。
【0013】
FAP切断基質であるペプチドプロドラッグは、FAPの配列選択的切断により、細胞傷害性または細胞分裂停止性の代謝産物に転換されると報告されている(特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5)。ペプチドプロリン−ボロナートプロテアーゼ阻害剤が報告されている(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;特許文献6;特許文献7;特許文献8;特許文献9;特許文献10;特許文献11;特許文献12)。環状BoroPro化合物は、経口投与に有用であると報告されている(特許文献13)。N−アセチルリジンプロリンボロナート化合物は、抗菌薬として提唱されている(特許文献14)。
【特許文献1】米国特許第6,613,879号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/021979号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2003/0232742号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0055052号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0155565号明細書
【特許文献6】米国特許第4,935,493号明細書
【特許文献7】米国特許第5,288,707号明細書
【特許文献8】米国特許第5,462,928号明細書
【特許文献9】米国特許第6,825,169号明細書
【特許文献10】国際公開第2003/092605号パンフレット
【特許文献11】米国特許出願公開第2004/0229820号明細書
【特許文献12】国際公開第2005/047297号パンフレット
【特許文献13】米国特許第6,355,614号明細書
【特許文献14】米国特許第5,574,017号明細書
【非特許文献1】Bachovchin et al(1990)Jour.Biol.Chem.265(7):3738−3743
【非特許文献2】Flentke et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.88:1556−1559
【非特許文献3】Snow et al(1994)J.Amer.Chem.Soc.116(24):10860−10869
【非特許文献4】Coutts et al(1996)J.Med.Chem.39:2087−2094
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
要旨
本発明の化合物は、N−ブロックジペプチドプロリンボロナート(式I)化合物およびN−ブロックペプチドプロリンボロナート(式II)化合物を含む。式IおよびIIの化合物は、癌などの過増殖性障害の治療に用いられる。
【0015】
1つの局面では、式IおよびIIを有する本発明の化合物は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の阻害剤である。
【0016】
別の局面では、式IおよびIIを有する本発明の化合物は、プロリルオリゴペプチダーゼ(POP)の阻害剤である。
【0017】
本発明の別の局面は、酵素を有効阻害量の式IおよびIIの化合物またはこれらの化合物を含む組成物と接触させることにより、FAP活性を阻害する方法を提供する。
【0018】
本発明の別の局面は、癌、神経変性、心肥大、疼痛、片頭痛、神経外傷性疾患、肝硬変、線維腫症および関節リウマチなどの過増殖性障害を予防または治療する方法であって、当該治療を必要とする哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物または当該化合物を含む組成物のうちの1つおよび担体または賦形剤を投与することによる、方法である。
【0019】
本発明の別の局面は、癌を予防または治療する方法であって、当該治療を必要とする哺乳動物に、治療有効量の本発明の化合物の1つを、抗癌性性質を有する1つまたはそれ以上の追加の化合物と組み合わせて投与することによる、方法である。
【0020】
本発明の別の局面は、過増殖性障害の治療用薬物の製造における式IおよびIIの化合物の使用である。
【0021】
本発明の別の局面は、局在化のための画像形成プローブ、およびFAPまたは他のプロリルペプチダーゼ活性の検出を含む。画像形成プローブは、画像形成剤または造影剤に複合体化した式IおよびIIの化合物を含む。
【0022】
本発明の別の局面は、製品、すなわち、容器中の式IまたはIIのプロリンボロナート化合物、および治療を指示する添付文書またはラベルを含むキットである。
【0023】
本発明の別の局面は、式IまたはIIのプロリンボロナート化合物の製造方法、合成方法、分離方法および精製方法を含む。
【0024】
本発明は、以下の代表的な実施例の詳細な説明を、添付の図面、スキームおよび実施例と合わせて参照することにより理解され得る。以下の考察は例示、図解および代表的なものであり、添付の特許請求の範囲のいずれかによって定義される範囲を限定するとみなされるべきではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(例示的な実施形態の詳細な説明)
本発明の特定の実施例がここで詳細に参照されるが、その例は、添付の構造および式により図解される。本発明は、列挙した実施例と合わせて説明されるが、それらは本発明をそれらの実施態様に限定することを意図しないことが理解されるであろう。一方、本発明は、全ての代替物、改変物および等価物を包含することを意図し、これらは特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に含まれ得る。
【0026】
当業者は、本発明に用いられ得るであろう本明細書中に記載された方法および物質と同様のまたは等価の多くの方法および物質を理解するであろう。本発明は、記載された方法および物質にどのようにも制限されない。
定義
別段の定めがない限り、本明細書中で用いる以下の用語および句は、以下の意味を有することを意図する:
「アルキル」は、第1級、第2級および第3級またはスピロ環炭素原子を含む非環式C−C18炭化水素部分である。アルキル基の例には、例えば、以下のC−C炭化水素部分が挙げられる:メチル(Me、−CH)、エチル(Et、−CHCH)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CHCHCH)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CHCHCHCH)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CHCH(CH)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH)CHCH)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CHCHCHCHCH)、2−ペンチル(−CH(CH)CHCHCH)、3−ペンチル(−CH(CHCH)、2−メチル−2−ブチル(−C(CHCHCH)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH)CH(CH)、3−メチル−l−ブチル(−CHCHCH(CH)、2−メチル−1−ブチル(−CHCH(CH)CHCH)、1−ヘキシル(−CHCHCHCHCHCH)、2−ヘキシル(−CH(CH)CHCHCHCH)、3−ヘキシル(−CH(CHCH)(CHCHCH))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CHCHCHCH)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CH(CH)CHCH)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH)CHCH(CH)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH)(CHCH)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CHCH)CH(CH)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CHCH(CH)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH)C(CH、1−ヘプチル、1−オクチル。
【0027】
「アルケニル」は、少なくとも1つの不飽和の部位、すなわち炭素−炭素sp二重結合を有する第1級、第2級および第3級または環状炭素原子を含む非環式C−C18炭化水素部分である。例には、エチレンまたはビニル(−CH=CH)、アリル(−CHCH=CH)、イソブテニル、5−ヘキセニル(−CHCHCHCHCH=CH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
「アルキニル」は、少なくとも1つの不飽和の部位、すなわち炭素−炭素sp三重結合を有する第1級、第2級および第3級または環状炭素原子を含む非環式C−C18炭化水素部分である。例には、アセチレン性(−C≡CH)およびプロパルギル(−CHC≡CH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
「アルキレン」は、1〜18個の炭素原子の飽和の、分枝または直鎖または環状炭化水素基であって、親アルカンの同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除くことにより誘導される2つの一価基中心を有するものをいう。代表的なアルキレン基には、メチレン(−CH−)、1,2−エチル(−CHCH−)、1,3−プロピル(−CHCHCH−)、1,4−ブチル(−CHCHCHCH−)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
「アルケニレン」は、2〜18個の炭素原子の不飽和、分枝または直鎖または環状炭化水素基であって、かつ親アルケンの同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除くことにより誘導される2つの一価基中心を有するものをいう。代表的なアルケニレン基には、1,2−エチレン(−CH=CH−)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
「アルキニレン」は、2〜18個の炭素原子の不飽和、分枝または直鎖または環状炭化水素基であって、かつ親アルキンの同じまたは2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除くことにより誘導される2つの一価基中心を有するものをいう。代表的なアルキニレン基には、アセチレン(−C≡C−)、−プロパルギル(−CHC≡C−)、および4−ペンチニル(−CHCHCHC≡C−)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
「炭素環」および「カルボシクリル」は、単環として3〜12個の炭素原子を有するか、または二環として7〜12個の炭素原子を有する非芳香族の飽和または不飽和環である。単環式炭素環は、3〜6個の環原子を、さらにより代表的には5または6個の環原子を有する。二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として配列された7〜12個の環原子を有するか、またはビシクロ[5,6]または[6,6]系として配列された9または10個の環原子を有するか、またはビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンおよびビシクロ[3.2.2]ノナンなどの架橋系を有する。単環式炭素環の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、l−シクロペント−2−エニル、l−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキシ−1−エニル、1−シクロヘキシ−2−エニル、l−シクロヘキシ−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシルおよびシクロドデシルが挙げられる。
「アリール」は、親芳香環系の単独の炭素原子から1個の水素原子を除去して誘導される6〜20個の炭素原子の一価の芳香族炭化水素基である。いくつかのアリール基は、「Ar」としての例示的構造で表される。アリールは、非芳香族と融合した芳香環または部分的に飽和した環を含む二環式基を含む。代表的なアリール基には、ベンゼン、置換されたベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナフタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナフチルなどから誘導される基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0033】
「ヘテロアリール」、「ヘテロシクリル」および「複素環」は全て、1つまたはそれ以上の環原子が、ヘテロ原子、例えば、窒素、酸素および硫黄である環系をいう。ヘテロシクリル基は、1〜20個の炭素原子ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜6ヘテロ原子を含む。ヘテロシクリル基は、飽和または不飽和であり得る。ヘテロシクリル基は、芳香族または非芳香族であり得る。複素環は、3〜7環員(2〜6個の炭素原子ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子)を有する単環であり得るか、または7〜10環員(4〜9個の炭素原子ならびにN、O、PおよびSから選択される1〜3個のヘテロ原子)を有する二環、例えば:ビシクロ[4,5],[5,5],[5,6]または[6,6]システムである。複素環は、Paquette,Leo A.;“Principles of Modern Heterocyclic Chemistry”(W.A.Benjamin,New York,1968)、特に第1、3、4、6、7および9章;“The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs”(John Wiley & Sons,New York,1950〜現在まで)、特に、13、14、16、19および28巻;ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。
【0034】
ヘテロシクリル基の例には、例示のため、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:ピリジル、ジヒドロイピリジル(dihydroypyridyl)、4−ジアルキルアミノピリジニウム、テトラヒドロピリジル(ピペリジル)、チアゾリル、テトラヒドロチオフェニル、硫黄酸化テトラヒドロチオフェニル、ピリミジニル、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドレニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ピペリジニル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、2−ピロリドニル、ピロリニル、テトラヒドロフラニル、3−オキソ−テトラヒドロフラニル、3−オキシイミニオ(oximinio)テトラヒドロフラニル、ビス−テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、4−オキソ−テトラヒドロピラニル、4−オキシイミノテトラヒドロピラニル、ビス−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロイソキノリニル、アゾシニル、トリアジニル、6H−l,2,5−チアジアジニル、2H,6H−l,5,2−ジチアジニル、チエニル、チアントレニル、ピラニル、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H−ピロリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、IH−インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4aH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペラジニル、インドリニル、イソインドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシインドリル、ベンゾオキサゾリニルおよびイサチノイル。
【0035】
例示のためであり限定するものではないが、炭素結合複素環は、ピリジンの2、3、4、5または6位で、ピリダジンの3、4、5または6位で、ピリミジンの2、4、5または6位で、ピラジンの2、3、5または6位で、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの2、3、4または5位で、オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの2,4または5位で、イソキサゾール、ピラゾールまたはイソチアゾールの3、4または5位で、アジリジンの2または3位で、アゼチジンの2、3または4位で、キノリンの2、3、4、5、6、7または8位で、あるいはイソキノリンの1、3、4、5、6、7または8位で結合している。さらにより代表的には、炭素結合複素環には、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、5−ピリジル、6−ピリジル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、6−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、3−ピラジニル、5−ピラジニル、6−ピラジニル、2−チアゾリル、4−チアゾリルまたは5−チアゾリルが挙げられる。
【0036】
例示のためであり限定するものではないが、窒素結合複素環には、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、lH−インダゾールの1位で、イソインドールまたはイソインドリンの2位で、モルホリンの4位で、およびカルバゾールまたはβ−カルボリンの9位で結合している。さらにより代表的には、窒素結合複素環には、1−アジリジル、1−アゼテジル、1−ピロリル、1−イミダゾリル、1−ピラゾリルおよび1−ピペリジニルが挙げられる。
【0037】
置換基はまた、アルキレン、アルケニレン、アルキニレン、炭素環、アリールおよびヘテロアリール基の組み合わせ(例えば、シクロプロピルメチル、シクロヘキシルエチル、ベンジルおよびN−エチルモルホリノならびにそれらの置換体)でもあり得る。
【0038】
「置換されたアルキル」、「置換されたアリール」、「置換されたヘテロシクリル」および「置換されたカルボシクリル」は、1つまたはそれ以上の水素原子が、それぞれ独立して置換基で置換された、アルキル、アリール、ヘテロシクリルおよびカルボシクリルのそれぞれを意味する。代表的な置換基には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:F、Cl、Br、I、OH、OR、R、=O、=S、=NR、=N(O)(R)、=N(OR)、=N(O)(OR)、=N−NR、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(= Y)NR、−NR、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)NR、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)NR、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)OR、=Yおよび−SC(=Y)NR(式中、各Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20複素環または保護基であり;かつ、Yは、独立して、O、S、NR、N(O)(R)、N(OR)、N(O)(OR)またはN−NRである)。上記のアルキレン、アルケニレンおよびアルキニレン基もまた、同様に置換され得る。
【0039】
用語「アミノ酸側鎖」には、以下に見出されるような基が挙げられる:(i)アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンなどの、天然に存在するアミノ酸;(ii)オルニチンおよびシトルリンなどの微量アミノ酸;(iii)天然に存在するアミノ酸の合成類似体および誘導体;ならびに(iv)それらの全ての鏡像異性体、ジアステレオマー、同位体的濃縮体、同位体的標識体、保護体およびラセミ混合物。
【0040】
用語「治療する」または「治療」は、治療的処置および予防的なまたは予防的対策の両方をいい、目的は、癌の発症または伝播などの望まれない生理学的変化または障害を防ぐまたは低減することである。本発明の目的のために、有利なまたは望まれる臨床結果には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:検出可能なまたは検出不能な、症状の軽減、疾患の程度の減少、疾患の症状の安定化(すなわち、悪化しない)、病状進行の遅延または緩徐化、疾患症状の回復または緩和、および寛解(部分的または全体のいずれか)。「治療」はまた、治療を受けなかった場合に予測される生存率に対して生存率を延長することも意味し得る。治療が必要な者には、症状または障害を既に有する者、ならびに症状または障害を有する傾向がある者または症状または障害を予防すべき者が挙げられる。
句「治療有効量」は、(i)特定の疾患、症状または障害を治療または予防する、(ii)特定の疾患、条件または障害の1つまたはそれ以上の症状を減弱、寛解または除去する、あるいは(iii)本明細書に記載された特定の疾患、症状または障害の1つまたはそれ以上の症状の発症を予防または遅延する、本発明の化合物の量を意味する。癌の場合は、治療有効量の薬物は、癌細胞の数を減少させ得る;腫瘍のサイズを減少し得る;癌細胞の周辺器官への浸潤を阻害し得る(すなわち、ある程度緩徐にし得る、および好ましくは中止し得る);腫瘍転移を阻害し得る(すなわち、ある程度緩徐にし得る、および好ましくは中止し得る);腫瘍増殖をある程度阻害し得る;および/または癌に付随する症状の1つまたはそれ以上を緩和し得る。薬物は、増殖を防ぐおよび/または現存する癌細胞を殺し得る程度に、細胞分裂停止性および/または細胞傷害性であり得る。癌の治療については、効力は、例えば、疾患の進行時間(TTP)を評価することにより、および/または応答速度(RR)を決定することにより、測定され得る。
【0041】
用語「バイオアベイラビリティー」は、患者に投与される薬物の全身的に有効な(すなわち、血液/血漿レベル)の所定の量を意味する。バイオアベイラビリティーは、投与される剤形から全身循環を達成する薬物の時間(速度)および総量(程度)の測定値を指し示す絶対的な用語である。
【0042】
用語「癌」および「癌性」は、未制御の細胞増殖により代表的に特徴づけられる、哺乳動物における生理的条件をいうかまたは説明する。「腫瘍」は、1つまたはそれ以上の癌性細胞を含む。癌の例には、癌腫,リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、白血病またはリンパ腫が挙げられるが、これらに限定されない。このような癌のより詳細な例には、扁平上皮癌(例えば、上皮性扁平細胞癌)、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)を含む肺癌、肺の腺癌および肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞性癌、胃腸癌を含む胃癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌腫、腎臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌ならびに頭頚部癌が挙げられる。
【0043】
本願で用いられる用語「プロドラッグ」は、親薬物と比較して腫瘍細胞への細胞傷害性がより少なく、かつ、より活性な親型に活性化または転換し得る、薬学的に活性な物質の前駆物質または誘導体型をいう。例えば、Wilman,“Prodrugs in Cancer Chemotherapy” Biochemical Society Transactions,14,pp.375−382,615th Meeting Belfast(1986)およびStella et al.,“Prodrugs:A Chemical Approach to Targeted Drug Delivery,” Directed Drug Delivery,Borchardt et al.,(ed.),pp.247−267,Humana Press(1985)を参照されたい。本発明のプロドラッグには、より活性な細胞傷害性の遊離の薬物に転換され得る、リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、βラクタム含有プロドラッグ、必要に応じて置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは必要に応じて置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンプロドラッグが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いるためのプロドラッグ型に誘導体化され得る細胞障害性薬物の例には、上記したような化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
「リポソーム」は、薬物(本明細書中に開示されるN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート阻害剤など、および必要に応じて化学療法剤など)を哺乳動物に送達するのに有用な多様な型の脂質、リン脂質および/または界面活性物質から構成される小さいビヒクルである。リポソームの成分は、一般に、生体膜の脂質配置と同様に、二重層形式で配列されている。
【0045】
用語「添付文書」は、治療用製品の使用に関する指示、使用、用量、投与、禁忌および/または警告についての情報を含む、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれる指示書をいう。
【0046】
用語「キラルな」は、鏡像パートナーと重ね合わせることができない性質を有する分子をいい、一方、用語「アキラルな」は、鏡像パートナーと重ね合わせることができる分子をいう。
【0047】
用語「立体異性体」は、同一の化学構造を有するが、空間での原子または基の配置が異なる化合物をいう。
【0048】
「ジアステレオマー」は、2つまたはそれ以上のキラリティ中心を有する立体異性体であって、その分子が互いに鏡像ではないものをいう。ジアステレオマーは、異なる物性、例えば、融点、沸点、スペクトルの性質および反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動法およびクロマトグラフィーなどの高分解能の分析用手順の下で分離され得る。
【0049】
「鏡像異性体」は、互いの重ね合わせることができない鏡像である化合物の2つの立体異性体をいう。
【0050】
本明細書中で用いられる立体化学的定義および表現法は、一般に、S.P.Parker,Ed.,McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company,New York;およびEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley & Sons,Inc.,New York,1994に従う。多くの有機化合物は、光学活性体で存在する、すなわち、それらは、面偏光の面を回転する能力を有する。光学活性な化合物を記載するには、接頭辞D(d)およびL(l)を用いるか、あるいは、RおよびSが、分子のそのキラル中心の周りの絶対配置を表すのに用いられる。接頭辞dおよびlまたは(+)および(−)は、化合物による面偏光の回転の記号を命名するために用いられ、(−)またはlは、化合物が左旋性であることを意味する。(+)またはdの接頭辞を有する化合物は右旋性である。所定の化学構造については、これらの立体異性体は、それらが互いに鏡像であること以外は同一である。特定の立体異性体は、鏡像異性体とも呼ばれ得、かつ、そのような異性体の混合物は、しばしば、鏡像異性体混合物と呼ばれる。鏡像異性体の50:50混合物をラセミ混合物またはラセミ化合物といい、これらは、それらが化学反応またはプロセスにおいて立体選択性または立体特異性を有しない場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」および「ラセミ化合物」は、光学活性を有しない2つの鏡像異性の種の等モルの混合物をいう。
【0051】
本明細書中で用いられる句「薬学的に許容され得る塩」は、本発明の化合物の薬学的に許容され得る有機塩または無機塩をいう。代表的な塩には、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、二酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容され得る塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの他の分子を包含することを含み得る。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化する任意の有機または無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容され得る塩は、その構造中に1つを超える電荷原子を有し得る。複数の電荷原子が薬剤的に許容され得る塩の部分である場合は、複数の対イオンを有し得る。従って、薬学的に許容され得る塩は、1つまたはそれ以上の電荷原子および/または1つまたはそれ以上の対イオンを有し得る。
【0052】
「溶媒和化合物」は、1つまたはそれ以上の溶媒分子と本発明の化合物との会合体または複合体をいう。溶媒和化合物を形成する溶媒の例には、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸およびエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。用語「水和物」は、溶媒分子が水である複合体をいう。
【0053】
用語「保護基」または「Pg」は、他の官能基を化合物に反応させながら、特定の官能基をブロック化または保護するのに一般に用いられる置換基をいう。例えば、「アミノ保護基」は、化合物中のアミノ官能基をブロック化または保護する、アミノ基に付加した置換基をいう。適切なアミノ保護基には、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)および9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)が挙げられる。同様に、「ヒドロキシ保護基」は、ヒドロキシ官能基をブロック化または保護するヒドロキシ基の置換基をいう。適切な保護基には、アセチルおよびシリルが挙げられる。「カルボキシ保護基」は、カルボキシ官能基をブロックまたは保護するカルボキシ基の置換基をいう。一般のカルボキシ保護基には、−CHCHSOPh、シアノエチル、2−(トリメチルシリル)エチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、2−(p−トルエンスルホニル)エチル、2−(p−ニトロフェニルスルフェニル)エチル、2−(ジフェニルホスフィノ)エチル、ニトロエチルなどが挙げられる。保護基およびそれらの使用の一般的説明については、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,1991を参照されたい。
【0054】
用語「動物」は、ヒト(男性または女性)、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコおよびウマ)、食物源の動物、動物園の動物、海洋動物、鳥類および他の類似の動物種をいう。「食用動物」は、ウシ、ブタ、ヒツジおよび家禽類などの食物源の動物をいう。
【0055】
句「薬学的に許容され得る」は、物質または組成物が、処方物を含む他の成分、および/またはそれを用いて治療される哺乳動物と、化学的におよび/または毒物学的に適合しなければならないことを示す。
用語「処置すること(treating)」、「処置する(treat)」または「処置(treatment)」は、予防的(すなわち、予防的な)療法および対症療法の両方を包含する。
【0056】
用語「BoroPro」は、ピロリジニル環の2位のカルボン酸基[COOH]がボロニルグループ[B(OR)(OR)]で置換され、かつ、以下の構造を有するプロリンの下部構造アナログをいう:
【0057】
【化16】

(式中、波線は、式IおよびIIの化合物におけるアミドを形成するカルボニル基に結合する部位を示す)。
アミノ末端ブロックペプチドプロリンボロナート化合物
式IおよびIIのアミノ末端ブロックペプチドプロリンボロナート化合物は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)および他のプロテアーゼを阻害するのに有用であり、かつ、FAPにより仲介される障害を治療するのに有用である。
【0058】
本発明は、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)または他のプロテアーゼにより調節される疾患、症状および/または障害の治療に有用な、式Iを有するN−ブロックジペプチドプロリンボロナート化合物、ならびにその医薬組成物および処方物を提供する。式Iの化合物は、ならびにその立体異性体、互変異性体、溶媒和化合物および薬学的に許容され得る塩は、以下を含む:
【0059】
【化17】

[式中、
Xは、C(=O)、C(=NR)、NRC(=O)、NRC(=NR)、OC(=O)、OC(=NR)、P(O)(OR)、S(O)およびS(O)であり;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択されるか、または、RおよびRは、C−C20複素環を形成し;
は、保護されていてもよいアミノ酸側鎖であり;
およびRは、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環、C−C20アリール、プロドラッグおよび保護基から選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、C−C20アリール、C−C12炭素環、プロドラッグまたは保護基を形成する;
、R、R、R、R10、R11およびR12は、独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択され;
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環および複素環は、それぞれ、必要に応じてかつ独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、=O、=S、=NR、=N(O)(R)、=N(OR)、=N(O)(OR)、=N−N(R)、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換され;
Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基であり;かつ、
Yは、独立して、O、S、NR、N(O)(R)、N(OR)、N(O)(OR)またはN−N(R)である;
ただし、RがメチルでありかつXがC(=O)である場合、Rは、リジンまたはアセチルリジンではなく;Rがtert−ブチルでありかつXがOC(=O)である場合、Rはメチルではない]。
【0060】
本発明はまた、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)または他のプロテアーゼにより調節される疾患、症状および/または障害の治療に有用な、式IIを有するN−ブロックペプチドプロリンボロナート化合物、ならびにその医薬組成物および処方物を提供する。式IIの化合物、ならびにその立体異性体、互変異性体、溶媒和化合物および薬学的に許容され得る塩は、以下を含む:
【0061】
【化18】

[式中、
Zは、
【0062】
【化19】

であり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択されるか、またはRおよびRはC−C20複素環を形成し;
は、必要に応じて保護されたアミノ酸側鎖であり;
およびRは、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環、C−C20アリール、プロドラッグおよび保護基から選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、C−C20アリール、C−C12炭素環、プロドラッグまたは保護基を形成する;
、R、R、R、R10、R11およびR12は、独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択され;
13は、独立して、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基から選択され;
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環および複素環は、それぞれ、必要に応じてかつ独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、=O、=S、=NR、=N(O)(R)、=N(OR)、=N(O)(OR)、=N−N(R)、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換され;
Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基であり;
Yは、独立して、O、S、NR、N(O)(R)、N(OR)、N(O)(OR)またはN−N(R)であり;かつ、
nは、1、2、3、4、5、6、7または8である]。
【0063】
式IおよびIIの化合物について、Rは、トリアルキルシリル、ジアルキルフェニルシリル、安息香酸、ベンジル、ベンジルオキシメチル、メチル、メトキシメチル、トリアリールメチル、フタルイミドおよびテトラヒドロピラニルから選択される保護基であり得る。
【0064】
式IおよびIIの化合物について、Rは、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)NR、−NR、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)NR、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)NR、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれ以上の置換基で置換されていてもよいフェニルであり得る。
【0065】
式IおよびIIの化合物について、Rは、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、2−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリルおよびそれらの置換型から選択されるヘテロシクリルであり得る。
【0066】
式IおよびIIの化合物について、Rは、天然に存在するアミノ酸側鎖、ならびに微量アミノ酸およびシトルリンなどの天然に存在しないアミノ酸類似体である。Rが、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、−CHOH、−CH(OH)CH、−CHCHSCH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHCHCONH、−CHCHCOOH、−(CHNHC(=NH)NH、−(CHNH、−(CHNHCOCH、−(CHNHCHO、−(CHNHC(=NH)NH、−(CHNH、−(CHNHCOCH、−(CHNHCHO、−(CHNHCONH、−(CHNHCONH、−CHCHCH(OH)CHNH、2−ピリジルメチル−、3−ピリジルメチル−、4−ピリジルメチル−、フェニル、シクロヘキシル、および以下の構造:
【0067】
【化20】

から選択される。
【0068】
が水素以外である場合、Rが結合する炭素原子はキラルである。Rが結合する炭素原子は、それぞれ、独立して、(S)または(R)立体配置であるか、あるいはラセミ混合物である。従って、式Iの化合物は、鏡像異性的に純粋な、ラセミ体またはジアステレオ異性体であり得る。
【0069】
代表的な実施例では、アミノ酸側鎖Rは、アラニン、2−アミノ−2−シクロヘキシル酢酸、2−アミノ−2−フェニル酢酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、γアミノ酪酸、α,α−ジメチルγアミノ酪酸、β,β−ジメチルγ−アミノ酪酸、オルニチンおよびシトルリン(Cit)を含む天然および非天然アミノ酸の側鎖から選択される。アミノ酸側鎖Rは、必要に応じて、側鎖の反応性官能基が保護されたアミノ酸の保護体を含む。保護されたアミノ酸試薬および中間体は周知であり、アセチル、ホルミル、トリフェニルメチル(トリチル)およびモノメトキシトリチル(MMT)で保護されたリジンが挙げられる。他の保護されたアミノ酸単位には、トシル基またはニトロ基で保護されたアルギニン、アセチル基またはホルミル基で保護されたオルニチンが挙げられる。
【0070】
式IおよびIIの化合物について、RおよびRは、ピナンジオール、ピナコールまたはカテコール、および以下の構造:
【0071】
【化21】

を有する環状ボロナートエステルを形成し得る。
【0072】
式Iの化合物の例には、式Ia:
【0073】
【化22】

(式中、XはC(=O)であり、R12はHである)から選択されるものが挙げられる。代表的な式Iaの化合物の例には、式Ib:
【0074】
【化23】

(式中、R、R、R、R、R10、R11およびR12はそれぞれHである)から選択されるものが挙げられる。
【0075】
代表的な式Ibの化合物は、以下の構造を含む:
【0076】
【化24】

(式中、RおよびRはそれぞれHである)。
【0077】
代表的な式Ibの化合物は、以下の構造を含む:
【0078】
【化25】

(式中、RおよびRは、C−C20複素環を形成する)。
【0079】
代表的な式Ibの化合物は、以下の構造を含む:
【0080】
【化26】

(式中、Rはメチルであり、RはHである)。
【0081】
代表的な式Ibの化合物は、以下の構造を含む:
【0082】
【化27】


【0083】
式Iの化合物の例には、式Ic:
【0084】
【化28】

から選択されるものが挙げられる。
【0085】
式Icの化合物は、以下の構造を含む:
【0086】
【化29】


【0087】
式IIの化合物の例には、式IIaおよびIIb:
【0088】
【化30】

から選択されるものが挙げられる。
【0089】
式IIaの化合物は、以下の構造を含む:
【0090】
【化31】


【0091】
N−ブロックペプチドプロリンボロナート化合物の合成
ペプチド化合物は、当該分野で公知の定法により調製され得、実施例5で考察され得る。プロリンボロナート中間体は、米国特許第4935493号明細書;米国特許第5462928号明細書;米国特許第6355614号明細書;Gao et al(1998)J.Am.Chem.Soc.120(10):2211−2217;およびGibson et al(2002)Organic Proc.Res.& Dev.6:814−816;Coutts et al(1996)J.Med.Chem.39:2087−2094で確立された方法により、調製され得る。多くの有機ホウ素化合物が商業的に入手可能である(Aldrich Chemical,St.Louis,MO;Boron Molecular Inc,Research Triangle Park,North Carolina,27709)。
【0092】
N−アセチル−gly−ボロプロリン5は、tert−ブチル 1−ピロリジンカルボン酸(N−t−BOC−ピロリジン、Aldrich)から、図1および実施例6の合成経路に従って調製された。THF中のN−t−BOC−ピロリジンでsec−ブチルリチウムを用いてメタル化した後、トリメチルボレートを添加して、1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−イル−2−ボロン酸1を得た。選択した単独の鏡像異性体(+)−ピナンジオールでのtert−ブチルメチルエーテル(MTBE)中でのホウ酸塩エステル化により、ピナンエステル2(Coutts et al(1994)Tetrahedron Letters 35(29):5109−5112;Kelly et al(1993)Tetrahedron 49:1009−1016)を得た。BOC基の酸加水分解および選択的結晶化により、(+)−ピナン 1−ピロリジン−2−イル−2−ボロナート3を得た。3およびN−アセチルグリシンをEDC(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)およびHOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いてカップリングすることにより、N−アセチル−gly−ボロプロリン4のピナンホウ酸塩を得る。4を、フェニルボロン酸とホウ酸エステル交換することにより、N−アセチル−gly−ボロプロリン5を得た。
【0093】
ペプチドおよび基質の標識化
ペプチドFAP基質の標識化は、代表的には、適切な反応性染料および複合体化すべきペプチドを、当該分野で周知の方法(Hermanson,Bioconjugate Techniques,(1996)Academic Press,San Diego,CA)を用いて、両方が可溶であるような適切な溶媒中で混合し、複合体化しなかった出発物質または望ましくない副産物から複合体を分離することにより、行われる。染料複合体は、後に使用するために、乾燥状態でまたは溶液で貯蔵され得る。染料は、染料の他の分子への共有結合のための位置の置換基の1つにおいて、反応性結合基を含み得る。共有結合を形成し得る反応性結合基は、代表的には、アルコール、アルコキシド、アミン、ヒドロキシルアミンおよびチオールなどの、求核性分子と反応し得る求電子性官能基である。反応性結合基の例には、スクシンイミジルエステル、イソチオシアン酸塩、塩化スルホニル、スルホナートエステル、シリルハライド、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、ホスホルアミダイト、マレイミド、ハロアセチル、エポキシド、アルキルハライド、アリルハライド、アルデヒド、ケトン、アシルアジド、無水物およびヨードアセトアミドが挙げられる。代表的な反応性結合基は、染料のカルボキシル置換基のN−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)である。染料のNHSエステルは、予め形成され、単離され、精製され、かつ/または特徴づけされ得るか、あるいはその場(in situ)で形成され、かつペプチドの求核性基などと反応し得る。代表的には、染料のカルボキシル体は、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミドなどのカルボジイミド試薬、あるいは、例えば、EDC(N−エチル−N’,3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、TSTU(O−(N−スクシンイミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボレート、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)またはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート)などのウロニウム試薬、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびN−ヒドロキシスクシンイミドなどの活性化剤のいくつかの組み合わせを用いて反応させて、染料のNHSエステルを得る。他の活性化および縮合試薬には、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1−1,3,3−テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスフェート)、TFFH(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルウロニウム 2−フルオロ−ヘキサフルオロホスフェート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスピロリジノホスホニウム ヘキサフルオロホスフェート)、EEDQ(2−エトキシ−l−エトキシカルボニル−l,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(l−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、および例えばトリイソプロピルベンゼンスルホニルハライドなどのアリールスルホニルクロリドが挙げられる。
【0094】
FRET対のエネルギー移動染料には、第1の波長で光を吸収し、かつ応答時に励起エネルギーを放射するドナー染料、ドナー染料により放射された励起エネルギーを吸収し、かつ応答において第2の波長で蛍光発光し得るアクセプター染料が挙げられる。染料は、フルオレセイン、ローダミン、ジアゾジアリール型またはシアニンなどの任意の広範な複合体構造のいずれかであり得、その多くは商業的に入手可能である(Molecular Probe Inc.,Eugene OR;Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)。ペプチドは、ペプチドの切断部位の反対側でドナー染料およびアクセプター染料を用いて標識され得る。ペプチド類は、カルボキシル末端、アミノ末端または内部アミノ酸、例えば、システインまたはリジン側鎖で標識され得る(米国特許第5605809号明細書)。
【0095】
ペプチド基質は、液相法または固相法により調製され得る。固相法は、代表的な固相ペプチド合成法により、t−BOC(Geiser,et al.“Automation of solid−phase peptide synthesis” in Macromolecular Sequencing and Synthesis,Alan R.Liss,Inc.,1988,pp.199−218)、またはFmoc/HBTU化合物(Fields,G.and Noble,R.(1990)“Solid phase peptide synthesis utilizing 9−fluorenylmethoxycarbonyl amino acids”,Int.J.Peptide Protein Res.35:161−214)を用いて、Rainin Symphony Peptide Synthesizerなどの自動化合成装置(Protein Technologies,Inc.,Tucson,AZ)、またはModel433(Applied Biosystems,Foster City,CA)上で、固相樹脂上で合成することを含む。
【0096】
プロテアーゼ発現および特徴付け
DPP−4は、最初に残基39から開始する可溶性糖タンパク質として、血清中に存在する(Durinx,et al.(2000)Eur.J.Biochem.267:5608−5613)。アミノ酸Thr38から開始する組換え型Ser39−DPP−4および類似の可溶性FAP分子が、実施例1に従って発現され、精製される(Edosada et al(2006)Jour.Biochem.281(11):7437−7444、第7438頁)。FAPは、還元条件下でSDS−PAGEにより分析した場合、97kDaの見かけ分子量で移動する。DPP−4は、還元SDS−PAGE条件下で、105−115kDaの分子量で移動する。これらの分子量は、一次アミノ酸配列に基づいて期待される分子量より15−20kDa高く、かつN−Glycanaseでの処理により減少するが、このことは、各プロテアーゼがN−グリコシル化されていることを示す。各プロテアーゼをさらに特徴づけるために、多角光散乱を、ゲル濾過クロマトグラフィーおよび干渉計回折測定と組み合わせて用いることにより、溶液中で決定する。FAPは、主に、標準に対する電気泳動移動度で200±15kDaの分子量を有する二量体として存在する。少量の単量体(溶出容積9.0ml)および多量体(溶出容積<8.0ml)のFAPもまた観察された。DPP−4の主な溶出ピークは、220±15kDaの分子量を有したが、このことは、二量体の組成を示す。本発明者らの可溶性プロテアーゼ調製物の二量体の性質は、FAPおよびDPP−4結晶構造の二量体の組成と一致するが、このことは、それらが構造的に無傷であることを示唆する(Aertgeerts,et al(2005)J.Biol.Chem.280(20):19441−19444;Rasmussen,et al(2003)Nature Structural Biology 10(1):19−25;Thoma,et al(2003)Structure 11:947−959;Engel,et al(2003)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100(9):5063−5068;Aertgeerts,et al(2004)Protein Science 13:1−10)。
【0097】
FAPの基質特異性
モデルペプチド基質のFAPによる切断は、ペプチドが、共に共鳴エネルギー転移(FRET)する2つの部分、蛍光性レポーターおよび失活剤で標識される場合、検出および定量化され得る。FRETペプチドの切断は、蛍光を遊離する、すなわち、消光を停止するが、これは検出および定量化され得る。レポーターの蛍光は、インタクトなペプチドにおける失活剤部分により、部分的にまたは有意に消光され得る。ペプチドのペプチダーゼまたはプロテアーゼによる切断の際に、検出可能な蛍光の増加が測定され得る(Knight,C.(1995)“Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes”,Methods in Enzymology,Academic Press,248:18−34)。
【0098】
FAPの基質特異性は、標識されたペプチド基質を用いて測定された(Edosada et al(2006)Jour.Biological Chem.281(11):7437−7444)。図3は、FRETペプチド基質RK(ダブシル(dabcyl))TS−P−PNQEQE(エダンス(edans))RのFAPによるエンドペプチダーゼ切断の相対的加水分解割合のグラフを示す。P部位は、プロリンのN末端側にあり、かつ、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から)。腫瘍におけるFAP酵素活性の度合いは、クマリン標識基質を用いる免疫捕捉アッセイにより決定され得る(Cheng et al(2005)Mol.Cancer Ther.4(3):351−60;Cheng et al(2002)Cancer Res.62:4767−4772)。
【0099】
表1は、FAPが、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)標識ペプチド、RK(ダブシル)TS−P−PNQEQE(エダンス)Rを切断することを示し、表中、グリシン、D−アラニンまたはD−セリンはPアミノ酸の位置にあり、ペプチド類は、0.1mg/mlのウシ血清アルブミンを含むアッセイ緩衝液中で、リジン(K)がフルオロフォアエダンス(5−((2−アミノエチル)アミノ)ナフタレン−1−スルホン酸、ナトリウム塩)で標識され、かつ、消光剤ダブシル(4−((4−(ジメチルアミノ)フェニル)アゾ)安息香酸)がグルタミン酸(E)で標識される。
【0100】
【化32】

【0101】
【表1】

図3は、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TS−P−PNQEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す。P部位は、グリシン−プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から)。図3は、モデルFRET標識ペプチドエンドペプチダーゼ基質の切断のFAP活性は、グリシンがプロリンのN末端側に隣接したときに最大であることを示す。
【0102】
図4aは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)T−P−GPNQEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す。P部位は、グリシン−プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、ロイシン、リジン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から)。図4aは、モデルFRET標識ペプチドエンドペプチダーゼ基質の切断のFAP活性は、グリシン、セリンまたはスレオニンがグリシン−プロリンのN末端側に隣接したときに最大であることを示す。
【0103】
図4bは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)−P−SGPNQEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す。P部位は、セリン−プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリンおよびチロシン(左から)。図4bは、モデルFRET標識ペプチドエンドペプチダーゼ基質の切断のFAP活性は、アラニンがセリン−グリシン−プロリンのN末端側に隣接したときに最大であることを示す。
【0104】
図4cは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TSGP−P1’−QEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示すが、ここで、P1’部位はグリシン−プロリンのC末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アスパラギン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から)。図4cは、モデルFRET標識ペプチドエンドペプチダーゼ基質の切断のFAP活性は、アラニン、アスパラギン、セリンまたはチロシンがセリン−グリシン−プロリンのC末端側に隣接したときに最大であることを示す。
【0105】
図4dは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TSGPN−P2’−EQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示すが、ここで、P2’部位はグリシン−プロリンのC末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から)。図4dは、モデルFRET標識ペプチドエンドペプチダーゼ基質の切断のFAP活性は、アラニン、グルタミンまたはセリンがセリン−グリシン−プロリン−アスパラギンのC末端側に隣接したときに最大であることを示す。
【0106】
FAPおよびジペプチジルペプチダーゼの示差活性
図2は、FRET標識FAP基質ペプチドであるRK(ダブシル)TSGPNQEQE(エダンス)Rの、FAPおよびDPP−4による加水分解の相対速度のグラフを示す。図2は、FAPはFRET標識ペプチドなどのエンドペプチダーゼ基質を切断する一方、DPP−4は切断しないことを示す。
【0107】
クマリン標識ペプチド基質のFAP切断
種々のN−ブロック化C末端クマリン(AMCC)Gly−Proジペプチド基質6の相対的切断速度を測定した。速度を、FAPおよびDPP−4についてN−非ブロック化Gly−Pro−AMCCに対して正規化した。表2は、N−ブロック改変体は、DPP−4の切断基質ではないが、FAPにより切断されることを示す。
【0108】
【化33】

【0109】
【表2】

FAPが他のN−置換−Gly−Pro−塩基基質を切断し得るかどうかを検討するため、N−メチル−、ホルミル−、スクシニル−、ベンジルオキシカルボニル−(Z−)およびビオチニル−Gly−Pro−AMCC基質6を合成し、FAP(37nM)およびDPP−4(6.8nM)と反応させた。スクシニル−Gly−Pro−AMCCを除き、FAPは、Gly−Pro−AMCC加水分解について正規化した速度の35−150%の速度で全てのN−置換−Gly−Pro−AMCC基質6を切断したが(表2)、このことは、プロテアーゼが、他のN末端ブロッキング基を許容することを示す。市販で入手可能なZ−Gly−Pro−AMCの動力学的解析(表5)は、Gly−Pro−AFCの触媒効率より約3倍低い触媒効率を示し(表4)、これらの結果と一致した。FAPでは、対照的に、DPP−4は、N−メチル−Gly−Pro−AMCCのみを、Gly−Pro−AMCCに匹敵する速度で切断した。低速の加水分解がホルミル−Gly−Pro−AMCC基質で得られたが、1mMまでの濃度では、スクシニル、Z−またはビオチニル−Gly−Pro−AMCC基質の切断は観察されなかった。このことは、DPP−4が、N−アシル−Gly−Pro−塩基基質を許容しないことを示す。DPP−4はまた、市販で入手可能なZ−Gly−Pro−AMCに対してほとんど活性を示さなかった(表5)。
【0110】
N−ブロック化(8)および非ブロック化(7)グリシン−プロリンジペプチド基質のFAPおよびいくつかのジペプチダーゼによる相対切断速度を測定した。表3に示す相対活性は、ジペプチダーゼDPP−4、DPP−7、DPP−8およびDPP−9は非ブロック化基質を好む一方、FAPはあまり特異的ではなく、7および8を同じ速度で切断することを実証する。
【0111】
【化34】

【0112】
【表3】

ジペプチドプロリン基質のアミノ末端のブロッキング効果を、FAPおよびDPP−4による切断において測定した。図6は、多様な濃度における、ブロック化(Ac−Gly−Pro−AFC 8)および非ブロック化(グリシン−Pro−AFC 7)ジペプチド基質のFAPおよびDPP−4による切断速度V(ナノモル/秒)のグラフを示す(Edosada et al(2006)Jour.Biological.Chem.281(11):7437−7444、第7440頁)。AFCは、2−(7−アミノ−4−(トリフルオロメチル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アセトアミド(Sigma Chemical Co.、クマリン151、7−アミド−4−トリフルオロメチルクマリン)である。FAPは、Ac−Gly−Pro−AFC8およびGly−Pro−AFC7を、かなりの速度で切断する。DPP−4は、Gly−Pro−AFC7を切断するが、Ac−Gly−Pro−AFC8は切断しない。ブロックの切断(kcat/K)の、FAPの非ブロック化基質に対する相対速度は、1.1であり、DPP−4については約0.00002である。DPP−4は、Ac−Gly−Pro−AFC8に対してほとんど活性を有しない。
【0113】
FAPおよびDPP−4による種々のC末端クマリンジペプチド基質7−16の切断(加水分解)速度を測定した(表4および5)。基質のアミノ末端は非ブロック化であり、アミノ酸は表4のように異なった。基質のアミノ末端をブロックし、アミノ酸は表5のように異なった。ジペプチド基質ライブラリについて得られた結果を拡張するために、非ブロック化ジペプチド基質のFAPによる切断について動力学的パラメータを決定した(表4)。基質切断のための触媒効率(kcat/K)は、Ile−Pro−AFCで最大であり、次いで、Ala−Pro、Gly−プロリンおよびフェニルAla−Pro−AFCであったが、このことは、ジペプチド基質ライブラリの結果と一致した(図5)。各基質についてのミカエリス定数は約250μMであったので、Ile−Pro−AFCを除いて、これらの差は、kcat値の差を反映する。観察されたミカエリス定数は、他のP−Pro−AFC基質よりも約2.5倍低いので、Ile−Pro−AFC加水分解について観察されたより高い触媒効率は、kcatおよびK効果の両方に起因する。FAPは、P−Alaベースの基質に対して著明に低い活性を示した。Gly−Ala−AMCは切断されず、Lys−Ala−AFC切断についての触媒効率は、P−Pro−ベースのペプチド類の触媒効率の切断についての触媒効率よりも400−1000倍少ないが(表4)、このことは、FAPがP位のProを好むことを示す。Ala−Pro−AFCおよびGly−Pro−AFCのDPP−4による切断の動力学的定数を決定した(表4)。Ala−Pro−AFC加水分解についての触媒効率は、Gly−Pro−AFCについての触媒効率よりも大きく、かつ、ジペプチドライブラリと一致した。著しく、ジペプチド加水分解のDPP−4による触媒効率は、一貫して、FAPについて観察されたものより約100倍高かったが、このことは、kcatの増加およびKの減少の両方を反映する。
【0114】
【表4】

基質の切断は、23℃にて、50mMトリス−HCl中、100mM NaCl、1mM EDTA、pH7.4で行った
基質が1mMとなるまで、切断は起こらなかった
【0115】
【表5】

基質の切断は、23℃にて、50mMのトリス−HCl中、100mMのNaCl、1mMのEDTA、pH7.4で行った
一次条件下、30nMのFAP、125μMの基質で測定した
一次条件下、200nMのDPP−4、250μMの基質で測定した
基質が1mMまで、切断は起こらなかった
Ac=CHC(=O);Z=PhCHOC(=O);AMC=7−アミノ−4−メチルクマリン;AFC=7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン;MNA=4−メトキシ−2−ナフチルアミン
図5は、FAP(上部)およびDPP−4(下部)による、モデルクマリン標識ジペプチド基質であるP−Pro−AMCCの相対的加水分解速度のグラフを示す。アミノ末端Pは、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファンおよびチロシン(左から)。AMCCは2−(7−アミノ−4−メチル−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アセトアミドである。両方の酵素について、モデルジペプチド基質に隣接するアミノ酸は、アミノ末端が非ブロック化である場合、ほとんど効果がなかった。FAPおよびDPP−4による他のP−Pro−AMCC基質のGly−Pro−AMCCに対する加水分解速度は、以下の表6に含まれる:
【0116】
【表6】

Gly−Pro−AMCCに対して正規化した加水分解速度
Ala−Pro−AFCに対するP−Pro−AMCC化合物によるFAPおよびDPP−4活性の阻害を、表7の種々の濃度のP−Pro−AMCC化合物を用いて測定した。
【0117】
【表7】

N−ブロック化ジペプチドプロリン基質のアミノ末端でのアミノ酸の変更がFAPによる切断に及ぼす効果を測定した。図7は、モデルクマリン標識ジペプチド基質Ac−P−Pro−AFCのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す。アミノ末端Pは、L−アミノ酸が異なる:アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ノルロイシン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリンおよびチロシン(左から)。Ac−Gly−Pro−AFCによる切断の速度は、他のものよりもずっと速かった。システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸およびセリン置換改変体は、いくらかの切断活性を示した。DPP−4は、図7のAc−P−Pro−AFC化合物に対して活性を示さなかった。これらのデータは、DPP−4が限られたエンドペプチダーゼ活性を有し、かつ、FAPエンドペプチダーゼ活性がGly−Pro−含有基質に制限されることを示唆する。
【0118】
図8は、ブロック化(Ac−Gly−Pro−AFC 8)および非ブロック化(Gly−Pro−AFC 7)ジペプチド基質のキメラプロテアーゼ酵素(DPP−4)BP−(FAP)catによる切断のグラフを示す。
【0119】
不可逆的ジペプチド阻害剤の存在下でのFAPおよびDPP−4の切断活性を測定した(図9〜12)。それぞれの経時的研究(図9〜15)において、プロテアーゼ(FAP、DPP)および阻害剤化合物を共に4時間インキュベートし、次いで、残存する活性を基質に対してアッセイした。図9は、不可逆的阻害剤Ac−Gly−Pro−cmkの存在下における、10、100および500μMの異なる濃度のAc−Gly−Pro−cmkおよびネガティブコントロール(0μM)での基質L−Ala−Pro−AFCの切断における組換え型FAPおよび組換え型DPP−4の相対的活性のグラフを示す。cmkは、クロロメチルケトン−C(=O)CHClである。一方、FAPの阻害剤濃度依存的な阻害はほぼ完全であり、DPP−4はAc−Gly−Pro−cmkによって阻害されない。図10は、不可逆的阻害剤Ac−Gly−Pro−cmkでのプレインキュベーション後の組換え型FAP(左)および組換え型DPP−4(右)の相対的活性による基質L−Ala−Pro−AFCの切断の阻害の時間経過のグラフを示す。一方、FAP活性は、阻害剤の存在下で時間依存的であり、DPP−4は、Ac−Gly−Pro−cmkによって時間依存的に阻害されない。
【0120】
テトラペプチド不可逆的阻害剤の存在下でのFAPおよびDPP−4の切断活性を測定した。図11は、不可逆的阻害剤アセチル−Thr−Ser−Gly−Pro−cmk(TSGP−cmk)存在下における、10、100および500μMの異なる濃度のAc−Gly−Pro−cmkおよびネガティブコントロール(0μM)での基質L−Ala−Pro−AFCの切断における組換え型FAPおよび組換え型DPP−4の相対的活性のグラフを示す。一方、FAPの阻害剤濃度依存的な阻害はほぼ完全であり、DPP−4はTSGP−cmkによって実質的に阻害されない。図12は、不可逆的阻害剤TSGP−cmkの存在下での組換え型FAP(左)および組換え型DPP−4(右)の相対的活性による基質L−Ala−Pro−AFCの切断の阻害の時間経過のグラフを示す。一方、FAP活性は、阻害剤の存在下で時間依存的であり、DPP−4は、TSGP−cmkによって時間依存的に阻害されない。
【0121】
図13は、異なる濃度の可逆的阻害剤シクロヘキシルグリシン−2−シアノ−プロリン(CHCP)およびネガティブコントロール(0μM)の存在下でのFAP(上部)およびDPP−4(下部)によるジペプチドクマリン基質AP−AFCの加水分解(切断)のグラフを示す。CHCPは、DPP−4により阻害剤濃度依存的な切断を示すが、FAPによっては阻害剤濃度依存的な切断を示さない。
【0122】
N−ブロック化ジペプチドプロリンボロナート化合物のFAP阻害活性
図14は、異なる濃度のFAP阻害剤Ac−Gly−BoroPro5の存在下で蛍光(RFU、相対的蛍光単位)の放出により測定される組換え型FAP(上部)および組換え型DPP−4(下部)による基質L−Ala−Pro−AFC(5μM)の切断の時間経過のグラフを示す。FAPは、マイクロモル以下の濃度のAc−Gly−BoroProで容易に反応して、図14(上部)の進行曲線に示すように、急速に定常状態の阻害レベルに達する。対照的に、DPP−4は、阻害のためのより高いAc−Gly−BoroPro濃度および定常状態阻害レベル(図14下部)に達するためのより長い時間を必要とした。阻害剤の非存在下(V)でおよび存在下(V)での産物生成の定常状態を、阻害剤濃度に対してV/V−1をプロットすることにより見かけの阻害定数(Kiapp)を計算するのに用いた。FAPについては、計算された阻害定数(K)は23±3nMであり、DPP−4については377±18nMであったが(表9)、このことは、Ac−Gly−Proモチーフが、FAP阻害に対して約16倍の選択性を提供することを示す。
【0123】
FAP、DPP−4およびPOPによる基質L−Ala−Pro−AFCの切断のいくつかの他のN−末端ブロック化Gly−BoroPro阻害剤のK値および選択性を、表8に示す:
【0124】
【表8】

N−メシル化Gly−BoroPro化合物は、FAPに対して活性であるが、Ac−Gly−BoroPro5よりも選択性が低い。N−ブロック化トリペプチドAc−Ser−Gly−BoroProは、5のように活性でも選択的でもない。
【0125】
図15は、5.0、1.0、0.5、0.1μMおよびネガティブコントロール(0μM)の異なる濃度のFAP阻害剤Ac−Gly−BoroPro5の存在下での残存する相対的酵素活性を測定するために蛍光の放出により測定された、基質L−Ala−Pro−AFCのジペプチジルペプチダーゼ、DPP−7(左上)、DPP−8(右上)、DPP−9(左下)およびAPH(アセチルペプチド加水分解酵素)(右下)の切断におけるプロテアーゼ阻害容量反応のグラフを示す。これらのプロテアーゼの多くは、遍在性の分布を示す(Rosenblum,J.S.and Kozarich,J.W.(2003)Current Opinion in Chemical Biology 7:496−504)。Ac−Gly−BoroPro5がこれらのプロリルペプチダーゼを阻害するかどうかを確立するために、各プロテアーゼをクローン化し、発現し、アッセイして、KおよびK値を決定し、かつそれらの活性をモニターした。際立って、Ac−Gly−BoroPro5は、これらのプロリルペプチダーゼを、FAP阻害のK値範囲より約9〜約5400倍高いK値範囲で阻害したが、このことは、Ac−Gly−Proモチーフが有意なFAP選択性を提供することを示す。阻害剤5は、これらのジペプチジルペプチダーゼに対する限られた活性のみを有するので、FAPの選択的阻害剤である(表9)。化合物5は、全長(膜貫通)マウスFAPを、細胞可溶化物中、117nMで阻害する。
【0126】
【表9】

本明細書中に示されるデータは、FAPを、ジペプチダーゼおよびGly−Proの両方の切断エンドペプチダーゼ活性を有するデュアル活性プロテアーゼであると定義する。この基質特異性は、単独でジペプチダーゼとして作用するDPP−4、−7、−8および−9(Mentlein,R.(1999)Regulatory Peptides 85:9−24;Augustyns,et al(2005)Current Medicinal Chemistry 12:971−998;Underwood,et al(1999)J.Biol.Chem 274(48):34053−34058;Abbott,et al(2000)Eur.J.Biochem.267:6140−6150;Ajami,et al(2004)Biochemica et Biophysica Acta 1679:18−28)ならびにエンドペプチダーゼ活性のみを発揮するPOP(Polgar,L.(2002)Cellular and Molecular Life Sciences 59,349−362)などの、単一の活性プロテアーゼとして作用する他のプロリルペプチダーゼとFAPとを区別する。さらに、FAPのデュアル活性は、ジペプチダーゼおよびエンドペプチダーゼ活性のいずれも欠くAPH(Jones,et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88,2194−2198)およびPCP(Odya,et al(1978)J.Biol.Chem 253(17),5927−5931)とは異なる。APHは、N−アセチルアミノ酸加水分解酵素として作用し、PCPは、Pro−Xカルボキシペプチダーゼとして作用する。従って、FAPの独特の基質特異性は、他のプロリルペプチダーゼとは異なり、かつ、選択的阻害剤の設計の可能性を提供する。
【0127】
FAPのN−アシル−Gly−Pro−ベースの基質との独特の反応性に基づき、本発明者らは、式IおよびIIのアミノ末端−ブロック化ペプチドプロリンボロナート化合物を開発した。式Iの実施態様であるAc−Gly−BoroPro5は、他のプロリルペプチダーゼに対して、FAPを選択的に阻害する。この選択性プロファイルおよびAc−Gly−BoroPro5におけるN−アシル結合により、これは、プロリルペプチダーゼを標的とした以下を含む他のボロン酸阻害剤:Val−BoroPro化合物(Flentke et al(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:1556−1559;Coutts et al(1996)J.Med.Chem.39:2087−2094;Snow et al(1994)J.Amer.Chem.Soc.116(24):10860−10869;Shreder et al.(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4256−4260);N−アルキル−Gly−BoroPro化合物(Hu,et al(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4239−4242);ならびにBoro−ノルロイシン化合物(Shreder et al(2005)Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 15:4256−4260)とは区別される。Val−BoroProおよびN−アルキル−Gly−BoroPro阻害剤は、ほとんどのプロリルペプチダーゼを標的とするが、一方、Boro−ノルロイシン−ベースの阻害剤は、DPP−7を選択的に標的とする。さらに、これらの阻害剤は、遊離のアミンをそれらのN末端に含むので、求電子性ホウ素との分子内反応が可能になり、結果として環化および阻害剤の不活性化が生じる。対照的に、アミノ末端ブロック化ペプチドプロリンボロナート化合物のN−ブロック化特徴部は、阻害剤のN末端をブロックするので、求核性がより低下し、従って、環化する可能性が低い。Ac−GIy−BoroProは、DPP−8およびDPP−9との乏しい反応性を示す。DPP−8およびDPP−9の選択的阻害は、動物において重篤な毒性を引き起こす(Lankas et al(2005)Diabetes 54:2988−2994)。
【0128】
本発明の化合物、式IおよびIIは、本明細書中に記載の方法により、およびVenalainen et al(2006)Biochemical Pharmacology 71:783−692に記載の方法により、プロリルペプチダーゼ(POP)阻害がアッセイされ得る。
【0129】
N−ブロック化ペプチドプロリンボロナート化合物の投与
本発明のN−ブロック化ジペプチドプロリンボロナート化合物、式IおよびIIは、治療すべき症状に適切な任意の経路により投与され得る。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、皮内、くも膜下腔内および硬膜外を含む)、経皮、経直腸、経鼻、局所(経頬および舌下を含む)、経腟、腹腔内、肺内および鼻腔内が挙げられる。局所的免疫阻害治療のための、化合物は、灌流または移植前に移植片を阻害剤と接触させることを含む疾患巣内投与により投与され得る。好ましい経路は、例えば、レシピエントの症状により異なり得ることが理解されるであろう。N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物が経口投与される場合、それは、薬学的に許容され得る担体または賦形剤と共に、ピル、カプセル、錠剤などとして処方され得る。N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物が非経口的に投与される場合、それは、以下に詳述するように、薬学的に許容され得る非経口的ビヒクルと共に、単位用量の注射可能な形態に処方され得る。
【0130】
N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の医薬製剤
本発明の化合物は、FAPにより調節される疾患、症状および/または障害を治療するのに有用である。従って、本発明の実施態様は、医薬組成物、すなわち、治療有効量の本発明の化合物および薬学的に許容され得る賦形剤、希釈液または担体を含む製剤である。
【0131】
代表的な製剤は、本発明の化合物と、担体、希釈液または賦形剤とを混合することにより調製される。適切な担体、希釈液および賦形剤は、当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/または膨張性重合体、親水性または疎水性物質、ゼラチン、油、溶媒、水などの物質が挙げられる。用いられる特定の担体、希釈液または賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段および目的に依存するであろう。溶媒は、一般に、当業者が哺乳動物に投与するのに安全であると認識している溶媒(GRAS)に基づいて選択される。通常、安全な溶媒は、水などの無毒の水性溶媒、および水に可溶性または混和性である他の無毒の溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、ならびにそれらの混合物が挙げられる。製剤はまた、薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)を簡便に提供するかまたは医薬品(すなわち、医薬)の製造を補助するために、1つまたはそれ以上の緩衝化剤、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、懸濁剤、保存料、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色料、甘味料、芳香剤、香味料および他の公知の添加剤を含み得る。
【0132】
製剤は、通常の溶解および混合手順を用いて調製され得る。例えば、原料薬物物質(すなわち、本発明の化合物または化合物の安定化形態(例えば、シクロデキストリン誘導体または他の公知の複合体化剤との複合体))を、上述した1つまたはそれ以上の賦形剤の存在下で、適切な溶媒中に溶解する。本発明の化合物は、代表的には、容易に制御可能な薬物の用量を提供し、かつ、患者の所定の投与計画へのコンプライアンスを可能にするための医薬剤形に処方される。
【0133】
適用のための医薬組成物(または処方物)は、薬物の投与に用いられる方法によって、種々の方法で包装され得る。一般に、販売用のキットまたは物品は、その中に医薬製剤を適切な剤形で入れた容器を有する。適切な容器は、当業者に周知であり、ボトル(プラスチックおよびガラス)、袋、アンプル、プラスチックバッグ、金属シリンダーなどの材料が挙げられる。容器はまた、パッケージの内容物への無分別な接近を防ぐための不正開封防止装置を含み得る。さらに、容器は、容器の内容物を記載したラベルを含む。ラベルはまた、適切な警告も含み得る。
【0134】
治療用の本発明のN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の医薬品、処方物は、投与の種々の経路および型のために調製され得る。所望の純度を有するN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物を、必要に応じて、薬学的に許容され得る希釈液、担体、賦形剤または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1980)16th edition,Osol,A.Ed.)と共に、凍結乾燥製剤、粉砕した粉末または水溶液の形態で混合する。製剤は、周囲温度にて、適切なpHおよび所望の純度で、生理学上許容され得る担体、すなわち、用いられる用量および濃度でレシピエントに無毒な担体と共に混合することにより行われ得る。製剤のpHは、主に、特定の用途および化合物の濃度に依存するが、約3〜約8の範囲内であり得る。酢酸塩緩衝液中pH5の製剤が、適切な実施態様である。
【0135】
本明細書中で用いるための阻害性化合物は、好ましくは無菌である。化合物は、通常、固形組成物として貯蔵されるが、凍結乾燥製剤または水溶液も許容され得る。
【0136】
本発明の医薬組成物は、良好な医療実務と一致した様式(すなわち、量、濃度、計画、過程、媒体および投与経路)で処方、投薬および投与されるであろう。この状況で考慮される因子には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与の方法、投与の計画および医学の専門家に公知の他の因子が挙げられる。投与すべき化合物の「治療有効量」は、そのような考慮により支配されるであろうし、かつ、凝固因子が媒介する障害を予防、緩和または治療するのに必要な最小量である。このような量は、好ましくは、宿主に有毒である量に満たないか、または宿主を有意により出血しやすくする量に満たない。
【0137】
一般的な提案として、1回の投与当たり非経口的に投与される阻害剤の初期の薬学的有効量は、約0.01−100mg/kgの範囲内、すなわち、一日当たり約0.1〜20mg/kg患者体重であり、用いられる化合物の代表的な初期範囲は、0.3〜15mg/kg/日である。
【0138】
許容され得る希釈液、担体、賦形剤および安定剤は、用いられる用量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、以下のものが挙げられる:リン酸、クエン酸塩および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンなどの抗酸化薬;保存料(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノールアルコール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロへキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性重合体;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖類および他の炭水化物;EDTAなどのキレート化剤;ショ糖、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);ならびに/あるいはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。活性な医薬品成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によるかまたは界面重合によって調製されたマイクロカプセルに封入され得、例えば、コロイド性薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルがそれぞれ挙げられる。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0139】
徐放性製剤が調製され得る。徐放性製剤の適切な例には、N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物を含む固形疎水性重合体の半透性マトリックスが挙げられ、当該マトリックスは、成形された物品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの例には、ポリエステル、ハイドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリル酸)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(米国特許第3773919号明細書)、L−グルタミン酸およびγ−エチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体(乳酸−グリコール酸共重合体および酢酸リュープロリドから構成される注射用微粒子)およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸などが挙げられる。
【0140】
インビボ投与に用いられる製剤は、無菌でなければならないが、これは無菌濾過膜を通して濾過することにより、容易に達成される。
【0141】
製剤には、本明細書中に詳述した投与経路に適切なものが挙げられる。製剤は、簡便には、単位投与形態で提供され得、薬学の分野で周知の方法のいずれかにより調製され得る。技術および製剤は、一般に、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA)に見出される。当該方法は、活性成分を、1つまたはそれ以上の補助成分を含む担体と合わせる工程を含む。通常、製剤は、活性成分を、液状担体または精密に分割した固形担体または両方と均一にかつ念入りに合わせ、次いで、必要に応じて製品を成形することにより、調製される。
【0142】
経口投与に適切なN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の製剤は、それぞれ所定量のN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物を含むピル、カプセル、カシェまたは錠剤などの個別の単位として調製され得る。
【0143】
圧縮錠剤は、粉末または顆粒などの自由に流動する形態の活性成分を、必要に応じて、結合剤、潤滑剤、不活性希釈液、保存料、界面活性剤または分散剤と共に混合し、適切な機械中で圧縮することにより、調製され得る。成形錠剤は、適切な機械中で、不活性液体希釈剤で湿した粉末活性成分の混合物を成形することにより製造され得る。錠剤は、必要に応じて、被覆され得るかまたは分割線をつけられ得、かつ、必要に応じて、当該錠剤からの活性成分の遅延放出または制御放出を提供するように処方される。
【0144】
錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性または油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、エマルジョン、ハードまたはソフトカプセル(例、ゼラチンカプセル)、シロップまたはエリキシル剤は、経口での使用のために調製され得る。経口での使用を意図したN−アシル化ペプチドプロリンボロナート化合物の製剤は、医薬組成物を製造するために当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、味の良い製剤を提供するために、1つまたはそれ以上の、甘味料、香味料、着色料および保存剤などの薬剤を含み得る。活性成分を、錠剤の製造に適した無毒の薬学的に許容され得る賦形剤との混合物中に含む錠剤は、許容され得る。賦形剤には、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウム、マンニトール、クロスポビドン、ポリソルベート80、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コロイド性二酸化ケイ素、微結晶性セルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、シメチコン、ポリエチレングリコール6000、ショ糖、炭酸マグネシウム、チタン二酸化物、メチルパラベンおよびポリビニルアルコール。賦形剤はまた、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの顆粒化剤および崩壊剤;デンプン、ゼラチンまたはアカシアなどの結合剤;およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤を含み得る。錠剤は、コーティングされていなくてもよいし、胃腸管中での崩壊および吸着を遅延させるためのカプセル化を含む公知技術によりコーティングされることにより、より長期にわたって持続する作用を提供してもよい。例えば、グリセリルモノステアレートまたはグリセリルジステアレートなどの時間遅延物質が、単独でまたはワックスと共に用いられ得る。
【0145】
眼または他の外部組織、例えば口および皮膚などの感染症のために、製剤は、好ましくは、活性成分を例えば0.075〜20%w/wの量で含む局所用軟膏またはクリームとして塗布される。軟膏に製剤される場合、活性成分は、パラフィン性または水混和性軟膏基剤のいずれかと共に用いられ得る。あるいは、活性成分は、水中油型クリーム基材と共にクリームに処方され得る。
【0146】
所望であれば、クリーム基材の水相は、多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400が挙げられる)などの2つまたはそれ以上のヒドロキシル基を含むアルコール、ならびにその混合物を含み得る。局所製剤は、望ましくは、活性成分の皮膚または他の患部への吸収または浸透を増強する化合物を含み得る。そのような皮膚浸透増強剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連アナログが挙げられる。
【0147】
本発明のエマルジョンの油相は、公知の成分から、公知の様式で構成され得る。相は乳化剤(またはエマルジョンとして知られる)のみを含み得るが、望ましくは、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪または油または脂肪および油の両方との混合物を含む。好ましくは、親水性乳化剤は、安定剤として作用する親油性乳化剤を共に含む。油および脂肪の両方を含むこともまた好ましい。また、乳化剤は、安定剤なしでまたは安定剤と共に、いわゆる乳化ワックスを構成し、ワックスは、油および脂肪と共に、クリーム製剤の油分散相を形成するいわゆる乳化軟膏基剤を構成する。本発明の製剤への使用に適した乳化剤およびエマルジョン安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノ−ステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0148】
本発明の水性懸濁液は、活性成分を、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に含む。このような賦形剤には、カルボキシメチルセルロース、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントおよびアカシアゴムなどの懸濁化剤;天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート)が挙げられる。水性懸濁液はまた、1つまたはそれ以上のエチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシ−安息香酸などの保存料、1つまたはそれ以上の着色料、1つまたはそれ以上の香味料および1つまたはそれ以上のスクロースまたはサッカリンなどの甘味料を含み得る。
【0149】
N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の医薬組成物は、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液などの、無菌の注射可能な懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、上記された適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて処方され得る。無菌の注射可能な懸濁液はまた、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤または溶媒、例えば1,3−ブタンジオール中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得るか、または凍結乾燥粉末として調製される。用いられ得る許容され得るビヒクルまたは溶媒のなかでも、用いられ得るのは、水、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウム溶液などである。さらに、不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として通常用いられ得る。この目的のために、合成モノ−またはジグリセリドを含む任意の無味無臭の不揮発性油が用いられ得る。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も、同様に注射液の調製物に用いられ得る。
【0150】
担体物質と併用されて単一の剤形を生じ得る活性成分の量は、治療される宿主および特定の投与様式によって異なるであろう。例えば、ヒトへの経口投与を意図した経時放出製剤は、約1〜1000mgの活性物質化合物を、全組成の約5〜約95%で異なり得る(重量:重量)適切かつ簡便な量の担体物質と共に含み得る。医薬組成物は、調製されて、投与のために容易に測定可能な量を提供し得る。例えば、静脈点滴を意図した水溶液は、約30mL/時間の速度で適切な体積の注入が起こり得るように、溶液1ミリリットル当たり約3〜500μgの活性成分を含み得る。
【0151】
非経口投与に適した製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、および意図するレシピエントの血液との等張性を製剤に付与する溶質を含み得る、水性および非水性の滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および濃厚化剤を含み得る水性および非水性の滅菌懸濁液が挙げられる。
【0152】
また、眼への局所投与に適した製剤には、活性成分が適切な担体、特に活性成分のための水性溶媒に溶解または懸濁した点眼剤が挙げられる。活性成分は、好ましくは、そのような製剤中に、0.5〜20%w/w、有利には0.5〜10%w/w、特に約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0153】
口腔内への局所投与に適した製剤には、活性成分をフレーバー基剤(通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカント)中に含むロゼンジ;活性成分を、ゼラチンおよびグリセリンまたはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤中に含むトローチ;ならびに、活性成分を適切な液状担体中に含むマウスウォッシュが挙げられる。
【0154】
直腸投与用の製剤は、例えば、カカオバターまたはサリチル酸塩などの適切な基剤を有する坐薬として提供され得る。
【0155】
経肺または経鼻投与に適した製剤は、例えば、0.1〜500ミクロンの範囲内にある粒径(0.5、1、30ミクロン、35ミクロンなどのような、増加するミクロンにおいて0.1ミクロンと500ミクロンとの間の範囲内にある粒径が挙げられる)を有し、これは、肺胞嚢に達するように、鼻の経路からの急速な吸入または口からの吸入により投与される。適切な製剤には、活性成分の水性または油性溶液が挙げられる。エアロゾルまたは乾燥粉末の投与に適した製剤は、定法に従って調製され得、かつ、以下に記載する、HIV感染症の治療または予防に従来用いられてきた化合物などの他の治療薬と共に送達され得る。
【0156】
経腟投与に適した製剤は、活性成分に加えて、適切であることが当該分野で公知であるような担体を含む、腟坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、気泡またはスプレー製剤として存在し得る。
【0157】
製剤は、単回用量または複数回用量容器、例えば、ピル、封着したアンプル、バイアルおよびブリスター包装などの単回用量または複数回用量容器中にパッケージングされ得る。製剤は、注射のために、使用の直前に、液状担体、例えば水を添加するだけでよい凍結乾燥状態で保存され得る。即時注射溶液および懸濁液は、上記した種類の無菌粉末、顆粒および錠剤から調製される。好ましい単回用量製剤は、本明細書中で上記したまたは適切な割合の、1日量または単位1日準用量の活性成分を含むものである。
【0158】
本発明は、さらに、上記で定義した少なくとも1つの活性成分を、その獣医学上の担体と共に含む獣医学的組成物も提供する。獣医学上の担体は、組成物を投与する目的のために有用な物質であり、固体、液体またはガス状物質であり得るか、あるいは不活性であるか、あるいは獣医学の分野で許容され得、かつ活性成分と適合性である固体、液体またはガス状物質であり得る。これらの獣医学組成物は、非経口的に、経口的にまたは任意の他の所望の経路により投与され得る。
【0159】
併用療法
本発明のN−ブロック化ジペプチドプロリンボロナート化合物は、組み合わせ医薬製剤または併用療法としての投与計画において、抗過増殖性を有するかまたは過増殖障害(例えば癌)の治療に有用な第2の化合物と併用され得る。組み合わせ医薬製剤または投与計画の第2の化合物は、好ましくは、組み合わせのN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物に対する相補的活性を有するので、互いに不利に影響しない。このような分子は、意図する目的に有効な量で、組み合わせで適切に存在する。
【0160】
併用療法は、同時または経時的療法として投与され得る。順に投与される場合、組み合わせは、2回またはそれ以上の投与で投与され得る。併用投与は、別々の処方物または単一の医薬品の処方物およびいずれかの順番の連続した投与を用いる同時投与を含み、好ましくは、両方のまたは全ての活性薬剤がそれらの生物活性を同時に発揮する期間がある。
【0161】
上記の同時投与される剤のいずれかについての適切な用量は、現在使用されているものであり、かつ、新しく同定される薬剤および他の化学療法剤または治療の併用作用(相乗作用)により低減され得る。
【0162】
併用療法は、「相乗作用」を提供し得、かつ、「相乗効果」、すなわち活性成分が共に使用された場合に達成される効果が、化合物を別々に用いた場合に得られる効果の和よりも大きいことを立証し得る。相乗効果は、活性成分が:(1)同時に処方され、かつ、組み合わせた単回用量製剤で同時に投与または送達される場合に;(2)別々の製剤として、交互にまたは並行して送達される場合に;または(3)いくつかの他の投与計画により、達成され得る。交互療法で送達される場合、相乗効果は、例えば、別々のシリンジでの異なる注射により、経時的に投与または送達される場合に達成され得る。通常、交互療法の間は、有効用量の各活性成分が、経時的に、すなわち連続的に投与され、一方、併用療法では、有効用量の2つまたはそれ以上の活性成分が共に投与される。
【0163】
N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の代謝物
本明細書中に記載のN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物のインビボ代謝産物もまた、そのような産物が先行技術に対して新規かつ非自明である限り、本発明の範囲内にある。このような産物は、例えば、投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、脱アミド化、エステル化、脱エステル化、酵素的切断などから生じ得る。従って、本発明は、本発明の化合物を、その代謝産物を得るのに十分な時間にわたって哺乳動物と接触させることを含むプロセスにより産生する新規かつ非自明の化合物を含む。
【0164】
代謝産物は、代表的には、本発明の化合物の放射標識された(例えば14CまたはH)同位体を調製し、これを検出可能な用量(例えば、約0.5mg/kg超)で、ラット、マウス、モルモット、サルなどの動物またはヒトに非経口的に投与し、代謝が起こるのに十分な時間(代表的には、約30秒〜30時間)を与え、かつ、その転換産物を、尿、血液または他の生物学的試料から単離することにより、同定される。これらの産物は、容易に単離されるが、なぜなら、それらは標識化されているからである(他のものは、代謝産物中で生存するエピトープを結合し得る抗体の使用により単離される)。代謝産物の構造は、例えば、MS、LC/MSまたはNMR分析などの通常の様式で決定される。通常、代謝産物の分析は、当業者に周知の通常の薬物代謝と同様の方法で行われる。転換産物は、インビボで別の方法で見出されない限り、本発明のN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物の治療的投与のための診断的アッセイに有用である。
【0165】
製品
本発明の他の実施態様では、上記障害の治療に有用な物質を含む製品または「キット」が提供される。製品は、容器、および当該容器上にまたは当該容器に添付されたラベルまたは添付文書を含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、ブリスター包装などが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から成型され得る。容器は、症状を治療するのに有効なN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物またはその製剤を有し、かつ、無菌のアクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針で貫通可能な栓を有する静脈注射用溶液バッグまたはバイアルであり得る)を有し得る。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明のN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物である。標識または添付文書は、組成物が、癌などの選択された症状を治療するのに用いられることを示す。1つの実施態様では、標識または添付文書は、使用のための指示を含み、かつ、N−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物を含む組成物が、過増殖障害を処置するのに用いられ得ることを示す。
【0166】
製品は、次のものを含み得る:(a)式IまたはIIのN−アシル化ジペプチドプロリンボロナート化合物をその中に含む第1の容器;および(b)第2の医薬製剤をその中に含む第2の容器(ここで、第2の医薬製剤は、抗過増殖活性を有する第2の化合物を含む)。本発明のこの実施態様の製品は、さらに、第1および第2の化合物が、癌などの過増殖障害を有する患者を治療するのに用いられ得ることを示す。あるいは、またはそれに加えて、製品は、さらに、注射(BWFI)用の静菌水、リン酸緩衝食塩水、リンゲル溶液およびブドウ糖溶液などの薬剤的に許容され得る緩衝液を含む第2の(または第3の)容器を含み得る。さらに、それは、他の緩衝液、希釈液、フィルタ、針およびシリンジなどの、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の物質を含み得る。
【実施例】
【0167】
実施例
物質− Ala−Pro−7−アミノ−トリフルオロメチルクマリン(AFC)、Phe−Pro−AFC、Gly−Pro−AFC、Ile−Pro−AFC、アセチル(Ac)Gly−Pro−AFCおよびLys−Ala−AFCは、Enzyme System Products,Livermore CAから得た。ベンジルオキシカルボニル(Z)Gly−Pro−7−アミノ−4−メチルクマリン(AMC)、Gly−Ala−AMC、Ac−Ala−AMCおよびアミノ酸誘導体は、Bachem California Inc.,Torrance CAから得た。Pを全てのアミノ酸(システインおよびトリプトファンを除く)に変えたAc−P−Pro−AFC基質ライブラリを、Enzyme System Productによりカスタム合成した。N−置換Gly−Pro−7−アミノ−4−メチル−3−カルバモイルクマリン(AMCC)基質およびP−Pro−AMCC基質ライブラリは、7−アミノ−4−メチル−3−クマリニル酢酸(Fluka Chemicals,Sigma Aldrich Co.からAMCA−H,08445[106562−32−7];MW=233.22として入手可能)を標識化フルオロフォア試薬として用いたこと以外は、実質的にMaly,et al(2002)J.Org.Chem.67:910−915に記載の通りに調製した。アミノ酸のカップリングおよび樹脂からの切断のために、アセトアミド部分がP−Pro−AMCC基質のカルボキシル末端で生成するように、7−アミノ−4−メチル−3−クマリニル酢酸をアミン生成ペプチド合成樹脂上に結合させた。N−アセチル化基質は、樹脂がKaiserニンヒドリンテスト(Sarin,et al(1981)Anal.Biochem.117(1):147−157)に陰性となるまで、10%トリエチルアミン/ジクロロメタン中の無水酢酸を用いてペプチド類を樹脂上で処理することにより、調製した。ホルミル化された基質を、Fields,et al(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(5):1384−1388に記載されるように調製した。Ac−Gly−Pro−ボロン酸(BoroPro)は、ValをAc−Glyで置き換えて脱保護を不要にしたこと以外は、Gibson,et al(2002)Org.Proc.Res.Dev.6(6):814−816に記載のように合成した。基質および阻害剤を、逆相クロマトグラフィーにより精製し、マトリックス補助レーザー脱離イオン化質量分析法により検証した。N−グリカナーゼは、Sigma Aldrich Co.,St.Louis,MOから得た。
【0168】
実施例1 FAP発現および精製
プロテアーゼクローニングおよび発現− DPP−4(アミノ酸39−766)およびFAP(アミノ酸38−760)の細胞外ドメイン(ECD)をコードするcDNAを、Quick Clone cDNAライブラリ(Stratagene,La Jolla,CA)を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法により、順方向および逆方向プライマーを有するテンプレートとして産生した:
【0169】
【化35】

【0170】
【化36】

PCR産物を、pGemT(Promega)にTA−クローン化し、かつ、DNA配列により確認した。次いで、確認されたcDNAを、N末端FLAG−タグ化タンパク質として発現させるため、pFLAG−CMVl(Sigma−Aldrich,St.Louis MO)にサブクローン化した。全長DPP−7、DPP−8、DPP−9、POPおよびAPHを含むプラスミドをOrigeneから得、かつ、上記各プロテアーゼをコードするpFLAG−CMVl発現構築物を産生するための鋳型として用いた。これらの構築物は、DPP−7のアミノ酸26−492、DPP−8のアミノ酸2−883、DPP−9のアミノ酸2−864、POPのアミノ酸2−710およびAPHのアミノ酸2−732をコードする。
【0171】
タンパク質産生のために、293細胞を、リン酸カルシウム、およびM2抗FLAG樹脂(Sigma)またはNTAニッケル樹脂(Qiagen Co.,Valencia CA)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより無血清条件培地から精製したタンパク質を用いて、FAP−ECDまたはDPP−4−ECDをコード化するプラスミドに形質移入した。クーマシーブルー染色を用いるドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)により決定されるように、タンパク質純度は95%を超えたが、例外的に、DPP8は、約70%の純度を有した。タンパク質濃度を、ビシンコニン酸(BCA)法(BioRad Laboratories,Hercules,CA)により決定した。代表的な収量は、FAPについて1mg/リットル、DPP−4について2.5mg/lであった。
【0172】
HT1080線維肉腫細胞またはヒト胚性腎臓293細胞などのFAP発現細胞株は、例えば、米国特許出願公開第2003/0055052号明細書の実施例9および10またはPark et al(1999)J.Biol.Chem.36505−36512に従った形質移入、およびFAP特異的mAbF19(Garin−Chesa et al(1990)Proc.Natl.Acad.Sci USA 87(18):7235−7239)を用いる免疫蛍光法アッセイでのFAP発現のアッセイにより調製され得る。可溶性組換え型FAPは、米国特許出願公開第2003/0055052号明細書の実施例11により調製され得る。FAPはまた、組換え型バキュロウイルス発現系を用いるヘキサヒスチジンタグ化タンパク質として昆虫細胞中で産生され得る。FAPの2つのアイソフォームであるグリコシル化および非グリコシル化FAPは、抗Hisタグ抗体を用いるWesternブロット法およびレクチンクロマトグラフィによる分離により同定された。グリコシル化FAPは、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(Sun et al(2002)Protein Expression and Purification 24(2):274−281)を用いてほぼ均一に精製された。FAPおよび他のプロテアーゼは、N末端FLAGタグを用いて発現され、かつ、抗FLAG抗体M2アフィニティーゲル(Sigma Aldrich,St.Louis MO)上で精製された。
ゲル濾過クロマトグラフィーおよび光散乱分析
精製されたプロテアーゼ調製物の化学量論を計算するために、各プロテアーゼの分子量を、多角度光散乱をゲル濾過クロマトグラフィーおよび干渉型屈折計と組み合わせて用いることにより測定した。この方法は、タンパク質濃度、屈折率および光散乱度に基づくタンパク質の分子量の正確な決定を可能にする。トリス緩衝化生理食塩水(TBS;50mMトリス(pH7.4)、100mM NaCl)中のプロテアーゼ(50μg)を、DAWN EOS 18−角光散乱検出器(Wyatt Technology,Santa Barbara CA)およびOPTILAB DSP干渉型屈折計(Wyatt Technology)を備えたAgilent 1100 FPLCに接続したShodex KW−803ゲル濾過カラム(流速0.5ml/分)に充填した。ASTRAソフトウェアを分子量計算に用いた。
【0173】
実施例2 FAP活性のインビトロアッセイ
プロテアーゼアッセイ− プロテアーゼ活性を、SpectraMaxM2マイクロプレートリーダー(Molecular Devices Corp.,Sunnyvale CA)を動力学的モードで用いて、連続的にモニタリングした。アッセイを、50mM トリス(pH7.4)、100mM NaCl、1mM EDTA中、23℃で行った。異なる蛍光発生基質についての励起/放出波長は、360/460nm(AMC)、400/505nm(AFC)、340/425nm(MNA)、340/510nm(EDANS)および337/425nm(Abs)であった。適切な蛍光産物の濃度に対する検量線を用いて、相対蛍光単位を、産生した産物のnmolに変換した。X−Pro−AMCライブラリ中の基質を、5μM最終濃度での速度アッセイで用いた。一般に、動力学的定数(kcat、K)は、0.1〜5の範囲のKm値および10〜35nMのプロテアーゼ濃度を用いて、初速度(V)の測定により決定した。動力学的パラメータを、GraphPadソフトウェアを用いて非線形回帰分析によりMichaelis−Mentenプロット(V対[S])から計算し、kcat値を、各プロテアーゼが100%活性であるとの仮定の下で計算した。
【0174】
基質の飽和量が達成できなかった場合、触媒効率(kcat/K)を、偽一次条件下([S]<<「概算の」K)下で決定し、次いで、式:Ln[S/S]=−kobst(式中、Stは時間tにおける基質の濃度であり、Sは初期基質濃度であり、かつ、kobsは、総酵素濃度(kcat/K)×Eに等しい見かけ上の一次基質切断定数である)にフィットさせた(Copeland,R.(2000)Enzymes,A Practical Introduction to Structure,Mechanism,and Data Analysis,2nd Ed.,John Wiley and Sons,Inc,New York)。Ln[S/S]対時間の直線関係により、プロットの勾配をEで除算することによるkcat/Kの計算が可能になる。
【0175】
阻害動態学− Ac−Gly−BoroProによるプロテアーゼの阻害についてのK値を、強い結合に競合的な阻害剤の解析のための進行曲線の方法を用いて決定した(Henderson,P.J.(1972)Biochem J.127:321−333)。簡便には、阻害剤および基質(APHについてAc−Ala−AMC、POPについてZ−Gly−Pro−AMC、およびその他全てについてAla−Pro−AFC)をアッセイ緩衝液中に含む反応混合物に、プロテアーゼを23℃で添加する。次いで、プロテアーゼ活性は、上記したように、モニター時間依存的阻害に連続的に従った。データを、V/V−1対[I]としてプロットした(式中、Vは、基質が阻害剤の非存在下で加水分解する場合の速度であり、Vは、阻害剤の存在下で加水分解する場合の定常速度であり、かつ、[I]は、Ac−Gly−BoroProの濃度である)。V/V−1対IIのプロットは直線的であり、見かけ上の阻害定数Kappは、勾配の相関から決定した。K(真の平衡阻害定数)を、以下の関係に従って決定した: K=Kapp/(1+[S]/K)(式中、[S]は、アッセイに用いた基質の濃度であり、Kは、基質切断についてのMichaelis定数である)(Edosada et al(2006)Jour.Biol.Chem.281(11):7437−7444、第7438頁)。
【0176】
Ac−GP−cmkおよびAc−TSGP−cmkを用いる阻害アッセイ
アセチル−gly−pro−クロロメチルケトンおよびアセチル−thre−ser−gly−pro−cmkを、Anaspec(San Jose,CA)でカスタム合成した。組換え型FAP(160nM)およびDPP−4(160nM)を、37℃で、100mM NaClおよび0.1mg/mlウシ血清アルブミンを含む50mMトリス−HCl(pH7.5、アッセイ緩衝液)中で、Ac−GP−cmkまたはTSGP−cmk(0〜500μM)と反応させた。6時間後、AP−AFC(50μM)に対する残存プロテアーゼ活性を、Molecular Devices M2プレートリーダーを用い、動力学モード(励起400nM、放出505nM)で測定した。阻害データを、阻害剤の非存在下で、プロテアーゼ活性に対する残存活性としてグラフ化した。
【0177】
FAPおよびDPP−4のcmkベース阻害剤による阻害を、偽一次条件下で検討した。時間の量を増加させるため、プロテアーゼ(100nM)を、アッセイ緩衝液中の10μMの阻害剤と37℃で反応させた。次いで、残存するプロテアーゼ活性を、AP−AFC(50μM)を基質として用いて測定した。偽一次速度定数を、Ln(残存プロテアーゼ活性)の時間に対するプロットの勾配から計算した。阻害の見かけ上の会合定数(kass)を、関係kass=kobs/[I](式中、kobsは偽一次速度定数であり、[I]は阻害剤濃度である)から決定した。
【0178】
実施例3 細胞表面FAPの阻害
骨髄HS5間質細胞は、FACS(蛍光活性化細胞ソーティング)により決定されるように、細胞表面FAPおよびDPP−4を発現する。これらの細胞を、DMSOビヒクルまたはAc−GP−cmk(100μM)を用いて、全3回の用量について1日2回処理した。次いで、細胞を、1mlの溶解緩衝液(50mMトリス、pH7.5、100mMのNaClおよび1% v/v triton X−100を含む)中に溶解し、細胞残屑を、遠心分離(10,000gで10分間)によりペレット化した。可溶化液上清(350μg)を2μgの抗FAP(自社で産生した)または抗DPP−4(クローンM−A261;Pharmingen)を用いて、4℃で一晩インキュベートした。次いで、免疫複合体を、50μlのプロテインA/Gビーズ(Piece Biotechnology Inc.,Rockford IL)を用いて回収した。洗浄後、AP−AFC(250μM)に対するプロテアーゼ活性を測定した。
【0179】
実施例4 Ac−GlyBoroPro5によるプロテアーゼ阻害
5によるプロテアーゼの阻害のK値を、進行曲線の方法を用いて決定した。簡便には、プロテアーゼ(10〜100nM)を、阻害剤5(0〜10μM)および基質AP−AFCをアッセイ緩衝液中に含む反応混合物に23℃で添加した。プロテアーゼ活性を、引き続いて、経時的なAFC(励起400nm/放出505nm)の遊離により、Molecular Devices M2プレートリーダーを用いてモニタリングした。データを、V/V−1対[I]としてプロットした(式中、Vは、基質が阻害剤の非存在下で加水分解する場合の速度であり、Vは、基質が阻害剤の存在下で加水分解する場合の定常速度であり、[I]は5の濃度である)。V/V−1対[I]のプロットは直線的であり、観察された阻害定数Kobsは、勾配の逆数から決定された。真の平衡阻害定数であるKは、以下の関係:K=Kobs/(1+[S]/K)に従って決定した(式中、[S]はアッセイで用いられた基質の濃度であり、Kは基質切断のMichaelis定数である)。
【0180】
全長プロテアーゼをコード化するプラスミドは、Origene Technologies Inc.,Rockville MDから得た。プロテアーゼDPP−7、DPP−8、DPP−9、POP、PCPおよびAPHを、PCR法により増幅し、可溶性分子として発現させるため、pFLAG−CMVlにサブクローン化させた。適切なプロテアーゼ構築物を含むPFLAG−CMVlプラスミドを、リン酸カルシウム法により、293細胞に形質移入した。形質移入の72時間後、プロテアーゼを、M2抗FLAG樹脂(Sigma Aldrich Co.,St.Louis MO)を用いて、培養上清から精製した。さらなる洗浄後、プロテアーゼを、0.1Mグリシン(pH2.5)を用いて樹脂上から溶出除去し、すぐに1Mトリス(pH8.0)で中和した。濃縮および適切なアッセイ緩衝液への透析後、プロテアーゼを、インビトロ動力学的解析に用いた。
【0181】
実施例5 FRET標識ペプチド類の合成
NHSエステル体中の色素をペプチド類に複合体化するための一般的なプロトコルは、水性アセトニトリル中のNHSエステル(アセトニトリルの百分率は、溶解度を達成するための色素の疎水性により決定される)を、水中のペプチド類(または、ペプチド類が疎水性である場合、アセトニトリル水溶液)に溶解することを必要とする。攪拌または振盪しながら、水性重炭酸ナトリウム緩衝液(1M)を溶液に加えることにより、0.1Mの緩衝液濃度を達成する。混合物を、室温で10分〜30分振盪する。反応混合物中の粗製ペプチド色素複合体は、逆相HPLCにより直接的に精製することができる。
【0182】
実施例6 N−アセチル−Glv−ボロプロリン5の合成
N−アセチル−gly−ボロプロリン5は、図1の合成経路に従って調製された。tert−ブチル 1−ピロリジンカルボキシラート(N−t−BOC−ピロリジン、Sigma−Aldrich Co.)をTHF中でsec−ブチルリチウムでメタル化し、次いで、トリメチルボラートを添加し、水性NaOHでの反応停止および抽出後、1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−イル−2−ボロン酸1を得た。メチル,tert−ブチルエーテル(MTBE)中での(1S,2S,3R,5S)、(+)−ピナンジオールを用いたホウ酸エステル化により、ホウ酸エステル2を得た。BOC保護基の酸加水分解およびイソプロピルアルコール中での選択的結晶化により、(+)−ピナン 1−ピロリジン−2−イル−2−ボロナート3を得た。3およびN−アセチルグリシンのEDC(N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)、HOBt(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール)およびDiPEA(ジイソプロピルエチルアミン)とのカップリングにより、N−アセチル−gly−ボロプロリン4のピナンボラートを得た。4をMTBEおよび水中でのフェニルボロン酸でホウ酸塩交換することにより、N−アセチル−gly−ボロプロリン5を得た。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】図1は、tert−ブチル 1−ピロリジンカルボキシラートからのN−アセチル−gly−ボロプロリン5の例示的な合成経路である。
【図2】図2は、FRET標識FAP基質ペプチドであるRK(ダブシル)TSGPNQEQE(エダンス)Rの、FAPおよびDPP−4による相対的加水分解速度のグラフを示す。
【図3】図3は、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TS−P−PNQEQE(エダンス)RのFAPによるエンドペプチダーゼ切断についての相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、P部位は、プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から))。
【図4a】図4aは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)T−P−GPNQEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、P部位は、グリシン−プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファンおよびチロシン(左から))。
【図4b】図4bは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)−P−SGPNQEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、P部位は、セリン−プロリンのN末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリンおよびチロシン(左から))。
【図4c】図4cは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TSGP−P1’−QEQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、P1’部位は、グリシン−プロリンのC末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジン、ロイシン、アスパラギン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から))。
【図4d】図4dは、FRETペプチド基質であるRK(ダブシル)TSGPN−P2’−EQE(エダンス)RのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、P2’部位は、グリシン−プロリンのC末端側にあり、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸、フェニルアラニン、リジン、ロイシン、グルタミン、アルギニン、セリン、バリンおよびチロシン(左から))。
【図5】図5は、モデルクマリン標識ジペプチド基質であるP−Pro−AMCCのFAPによる37nM(最大)でのFAPおよび6.8nM(最小)でのDPP−4による相対的加水分解速度のグラフを示す(ここで、アミノ末端Pは、L−アミノ酸が異なる:アラニン、アスパラギン酸,グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリン、トリプトファンおよびチロシン(左から1文字表記で示す))。AMCCは、2−(7−アミノ−4−メチル−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アセトアミドである。
【図6】図6は、37nMでのFAPによる、10.5nMのブロック(Ac−Gly−プロリン−AFC)でのDPP−4による、ならびに基質の多様な濃度での非ブロック化(グリシン−プロリン−AFC)ジペプチド基質による、ナノモル/秒の切断割合速度Voを示すグラフである。AFCは2−(7−アミノ−4−(トリフルオロメチル)−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)アセトアミド(SigmaChemical Co.、クマリン151、7−アミド−4−トリフルオロメチルクマリン)である。各値は、平均±SEM(n=3)を表す。
【図7】図7は、モデルクマリン標識ジペプチド基質であるAc−P−プロリン−AFCのFAPによる相対的加水分解速度のグラフを示す。アミノ末端Pは、L−アミノ酸が異なる:アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ノルロイシン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、スレオニン、バリンおよびチロシン(左から)。
【図8】図8は、キメラプロテアーゼ酵素である(DPP−4)BP−(FAP)catによる、ブロック(Ac−Gly−Pro−AFC)および非ブロック化(Gly−Pro−AFC)ジペプチド基質の切断のグラフを示す。
【図9】図9は、10、100および500μMならびにネガティブコントロール(0μM)の異なる濃度のAc−Gly−Pro−cmkでの不可逆的阻害剤Ac−Gly−Pro−cmkの存在下での基質L−Ala−Pro−AFCの切断における組換え型FAPおよび組換え型DPP−4の相対的活性のグラフを示す。cmkはクロロメチルケトン、−C(=O)CHC1である。
【図10】図10は、不可逆的阻害剤Ac−Gly−Pro−cmkの存在下での、組換え型FAP(左)および組換え型DPP−4(右)による基質L−Ala−Pro−AFCの切断における時間経過のグラフを示す。
【図11】図11は、10、100および500μMならびにネガティブコントロール(0μM)の異なる濃度のAc−Gly−Pro−cmkでの不可逆的阻害剤Acetyl−Thr−Ser−Gly−Pro−cmk(TSGP−cmk)の存在下での基質L−Ala−Pro−AFCの切断における組換え型FAPおよび組換え型DPP−4の相対的活性のグラフを示す。
【図12】図12は、不可逆的阻害剤TSGP−cmkの存在下での組換え型FAP(左)および組換え型DPP−4(右)の相対的活性による基質L−Ala−Pro−AFCの切断の時間経過のグラフを示す。
【図13】図13は、異なる濃度の阻害剤、シクロヘキシルグリシン−2−シアノ−プロリン(CHCP)およびネガティブコントロール(0μM)の存在下でのFAP(上部)およびDPP−4(下部)によるジペプチドクマリン基質AP−AFCの加水分解(切断)のグラフを示す。
【図14】図14は、異なる濃度のFAP阻害剤Ac−Gly−BoroPro5の存在下で蛍光(RFU、相対蛍光単位)の遊離により測定される、組換え型FAP(上部)および組換え型DPP−4(下部)による基質L−Ala−Pro−AFC(5μM)の切断の時間経過のグラフを示す。
【図15】図15は、異なる濃度(5.0、1.0、0.5、0.1μM)およびネガティブコントロール(0μM)のFAP阻害剤Ac−Gly−BoroProの存在下で蛍光の遊離を測定することにより、相対的酵素活性を測定した、ジペプチジルペプチダーゼ、DPP−7(左上)、DPP−8(右上)、DPP−9(左下)およびAPH(アセチルペプチドヒドロラーゼ)(右下)による基質L−Ala−Pro−AFCの切断の時間経過のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iから選択される化合物、ならびにその立体異性体、互変異性体、溶媒和化合物および薬学的に許容され得る塩であって:
【化1】

ここで、
Xは、C(=O)、C(=NR)、NRC(=O)、NRC(=NR)、OC(=O)、OC(=NR)、P(O)(OR)、S(O)およびS(O)であり;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択され;
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択されるか、または、RおよびRは、C−C20複素環を形成し;
は、必要に応じて保護されたアミノ酸側鎖であり;
およびRは、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環、C−C20アリール、プロドラッグおよび保護基から選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、C−C20アリール、C−C12炭素環、プロドラッグまたは保護基を形成し;
、R、R、R、R10、R11およびR12は、独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択され;
アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環および複素環は、それぞれ、必要に応じてかつ独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、=O、=S、=NR、=N(O)(R)、=N(OR)、=N(O)(OR)、=N−N(R)、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれより多い置換基で置換され;
Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基であり;かつ、
Yは、独立して、O、S、NR、N(O)(R)、N(OR)、N(O)(OR)またはN−N(R)であるが;
ただし、RがメチルでありかつXがC(=O)である場合、Rは、リジンでもアセチルリジンでもなく;Rがtert−ブチルでありかつXがOC(=O)である場合、Rはメチルではない、化合物。
【請求項2】
が、メチル、イソブチル、tert−ブチル、フェニルおよび2,4,6−トリメチルフェニルから選択され、かつ、XがC(=O)である、請求項1の化合物。
【請求項3】
がC−CアルキルまたはC−C20アリールであり、かつ、XがS(O)である、請求項1の化合物。
【請求項4】
が、Hである、請求項1の化合物。
【請求項5】
が、メチルである、請求項1の化合物。
【請求項6】
が、水素、メチル、イソプロピル、n−プロピル、イソブチル、sec−ブチル、n−ブチル、ベンジル、p−ヒドロキシベンジル、−CHOH、−CH(OH)CH、−CHCHSCH、−CHCONH、−CHCOOH、−CHCHCONH、−CHCHCOOH、−(CHNHC(=NH)NH、−(CHNH、−(CHNHCOCH、−(CHNHCHO、−(CHNHC(=NH)NH、−(CHNH、−(CHNHCOCH、−(CHNHCHO、−(CHNHCONH、−(CHNHCONH、−CHCHCH(OH)CHNH、2−ピリジルメチル−、3−ピリジルメチル−、4−ピリジルメチル−、フェニル、シクロヘキシル、および以下の構造:
【化2】

から選択される、請求項1の化合物。
【請求項7】
が、水素である、請求項1の化合物。
【請求項8】
およびRが、それぞれ水素である、請求項1の化合物。
【請求項9】
およびRが、共に環状ボロナートエステルを形成する、請求項1の化合物。
【請求項10】
前記環状ボロナートエステルが、ピナンジオール、ピナコールおよびカテコールから選択される、請求項9の化合物。
【請求項11】
を有する炭素原子が、R立体配置である、請求項1の化合物。
【請求項12】
を有する炭素原子が、S立体配置である、請求項1の化合物。
【請求項13】
ホウ素原子を有する炭素原子が、R立体配置である、請求項1の化合物。
【請求項14】
ホウ素原子を有する炭素原子が、S立体配置である、請求項1の化合物。
【請求項15】
Rが、トリアルキルシリル、ジアルキルフェニルシリル、安息香酸、ベンジル、ベンジルオキシメチル、メチル、メトキシメチル、トリアリールメチル、フタルイミドおよびテトラヒドロピラニルから選択される保護基である、請求項1の化合物。
【請求項16】
が、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)NR、−NR、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)NR、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)NR、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれより多い置換基で必要に応じて置換されるフェニルである、請求項1の化合物。
【請求項17】
が、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル、2−ピロリル、3−ピロリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル、5−ピリダジニル、2−ピリミジニル、5−ピリミジニル、6−ピリミジニル、2−ピラジニル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリルおよびそれらの置換型から選択されるヘテロシクリルである、請求項1の化合物。
【請求項18】
XがC(=O)でありかつR12がHである請求項1の化合物であって、式Ia:
【化3】

から選択される、化合物。
【請求項19】
、R、R、R、R10およびR11がそれぞれHである請求項18の化合物であって、式Ib:
【化4】

から選択される、化合物。
【請求項20】
以下の構造から選択される、請求項19の化合物:
【化5】

【請求項21】
以下の構造から選択される、請求項18の化合物:
【化6】

【請求項22】
以下の構造から選択される、請求項19の化合物:
【化7】

【請求項23】
以下の構造を有する、請求項19の化合物:
【化8】

【請求項24】
XがS(O)でありかつR12がHである請求項1の化合物であって、式Ic:
【化9】

から選択される、化合物。
【請求項25】
以下の構造から選択される、請求項24の化合物:
【化10】

【請求項26】
式IIから選択される化合物、ならびにその立体異性体、互変異性体、溶媒和化合物および薬学的に許容され得る塩:
【化11】

であって、ここで、
Zは、
【化12】

であり、
は、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択され;
各Rは、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環およびC−C20アリールから選択されるか、またはRおよびRはC−C20複素環を形成し;
各Rは、独立して、必要に応じて保護されたアミノ酸側鎖であり;
およびRは、独立して、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20複素環、C−C12炭素環、C−C20アリール、プロドラッグおよび保護基から選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、C−C20アリール、C−C12炭素環、プロドラッグまたは保護基を形成し;
、R、R、R、R10、R11およびR12は、独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択され;
13は、独立して、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基から選択され;
各アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環および複素環は、それぞれ、必要に応じてかつ独立して、F、Cl、Br、I、OH、OR、R、=O、=S、=NR、=N(O)(R)、=N(OR)、=N(O)(OR)、=N−N(R)、−C(=Y)R、−C(=Y)OR、−C(=Y)N(R)、−N(R)、−N(R)、−N(R)C(=Y)R、−N(R)C(=Y)OR、−N(R)C(=Y)N(R)、−SR、−OC(=Y)R、−OC(=Y)OR、−OC(=Y)(N(R))、−OS(O)(OR)、−OP(=Y)(OR)、−OP(OR)、−P(=Y)(OR)、−P(=Y)(OR)NR、−S(O)R、−S(O)R、−S(O)NR、−S(O)(OR)、−S(O)(OR)、−SC(=Y)R、−SC(=Y)ORおよび−SC(=Y)NRから選択される1つまたはそれより多い置換基で置換され;
Rは、H、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C−C20アリール、C−C20ヘテロシクリルまたは保護基であり;
Yは、独立して、O、S、NR、N(O)(R)、N(OR)、N(O)(OR)またはN−N(R)であり;かつ、
nは、1、2、3、4、5、6、7または8である、化合物。
【請求項27】
式IIa
【化13】

から選択される、請求項26の化合物。
【請求項28】
がC−CアルキルまたはC−C20アリールである、請求項27の化合物。
【請求項29】
がHである、請求項27の化合物。
【請求項30】
の少なくとも1つがメチルである、請求項27の化合物。
【請求項31】
およびRがそれぞれHである、請求項27の化合物。
【請求項32】
以下の構造から選択される、請求項31の化合物
【化14】

【請求項33】
式IIb:
【化15】

から選択される、請求項26の化合物。
【請求項34】
13が、C−CアルキルまたはC−C20アリールである、請求項33の化合物。
【請求項35】
各Rが、Hである、請求項33の化合物。
【請求項36】
およびRが、それぞれHである、請求項33の化合物。
【請求項37】
請求項1または請求項26に記載の化合物、および1つまたはそれより多いの薬学的に許容され得る担体または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項38】
抗増殖剤、抗炎症剤、免疫調節剤、神経栄養因子、循環器疾患の治療剤、肝疾患の治療剤、抗ウイルス薬、血液障害の治療剤、糖尿病の治療剤または免疫不全障害の治療剤から選択される追加の治療剤をさらに含む、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
FAP活性を検出可能に阻害する量の請求項1または請求項26に記載の化合物、および薬学的に許容され得る担体、アジュバントまたは賦形剤を含む、組成物。
【請求項40】
POP活性を検出可能に阻害する量の請求項1または請求項26に記載の化合物、および薬学的に許容され得る担体、アジュバントまたは賦形剤を含む、組成物。
【請求項41】
癌、卒中、糖尿病、肝腫大、循環器疾患、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、粥状動脈硬化、再狭窄、乾癬、アレルギー性障害、炎症、神経障害、ホルモン関連疾患、臓器移植に付随する症状、免疫不全障害、破壊的骨障害、増殖性障害、感染性疾患、細胞死に付随する症状、トロンビン誘発血小板凝集、慢性骨髄性白血病(CML)、肝疾患、T細胞活性化を含む病原的免疫症状および中枢神経系障害から選択される疾患または症状の重症度を、患者において治療または緩和する方法であって、該患者に、請求項37に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項42】
癌の治療を必要とする哺乳動物において癌を治療または予防する方法であって、該哺乳動物に、治療有効量の請求項37に記載の組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項43】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、頚部癌、前立腺癌、精巣癌、尿生殖器路癌、食道癌、喉頭癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、胃癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、肺癌、類表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨癌、結腸癌、腺腫、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞性癌腫、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、メラノーマ、肉腫、膀胱癌、肝癌および胆管癌、腎癌、骨髄性障害、リンパ性障害、有毛細胞癌、頬側口腔癌および咽頭癌(口腔癌)、唇癌、舌癌、口癌、咽頭癌、小腸癌、結腸直腸癌、大腸癌、直腸癌、脳および中枢神経系の癌、ホジキン病および白血病から選択される、請求項41の方法。
【請求項44】
癌を治療するための医薬組成物の製造における、請求項1または請求項26に記載の化合物の、使用。
【請求項45】
癌の治療方法であって、請求項37に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、方法。
【請求項46】
癌を治療するための薬物の製造における、請求項1または請求項26に記載の化合物の、使用。
【請求項47】
過増殖障害を治療するためのキットであって:
a)請求項1または請求項26の化合物を保持する容器;および
b)使用のための指示を有するラベルまたは添付文書
を含む、キット。
【請求項48】
第2の医薬組成物をさらに含み、該第2の医薬組成物が、抗過増殖活性を有する第2の化合物を含む、請求項47のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−545661(P2008−545661A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512608(P2008−512608)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/019876
【国際公開番号】WO2006/125227
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】